風評被害(言われなき差別)について

風評被害(言われなき差別)について

 福島の原発事故後に嫌な予感がした。残念ながらその予感は的中してしまったようだ。残念だ。福島の人への差別だ。新聞やテレビの報道があったので周知の方も多いだろう。
 父方の実家は町の中心部だった。幸い祖父は仕事で市外、祖母は疎開しており直接被害を受けていなかった。だが、父の叔父は、まだ少年だったが、両腕などやけどを負ってしまったらしい。その後、言われなき差別を受け、果敢なくもその後しばらく経って亡くなってしまった。「はだしのゲン」を読んだことがあるだろうか。「ピカがうつる」と言う悲しい件だ。あまり詳しく述べると無知蒙昧な差別を助長する恐れがあるのでやめる。ここで是非とも伝えたいことは、同じ街の、同じ被害者である人々からの言われなき差別…、それは、深く深く人を傷つけるのだ。その上、家族の者をも非常に深く深く傷つけるのだ。傷の痛みと病の恐怖と戦いながら差別に曝された叔父。人の残酷さにどれほど失望しただろう。どんなに辛かっただろう。今その苦しみが繰り返されているはただただ残念至極だ。
 あの時もこの度も被害者には全く落ち度はないのだ。むしろ一方的な被害者である。被害者は深く傷ついている。真っ先にそのことを考えるべきではないだろうか。被害者に追い討ちをかけるような行為は残念で情けないことだ。ただただ悲しみと虚しさを感じるだけだ。人の苦しみに心を馳せずして何ゆえ人といえるだろうか。自分達の健康を心配するのは人として当然のことだろう。だが、そのために人を傷つけることは許されないことではないか。
 マスコミにも大いに不満がある。報道することは必要なことだろう。だが、風評被害や差別をただ報道するのは無知な者の差別を助長するだけだ。購買意欲をそそるための下種な雑誌を措くとして、真摯に報道するのならばその点を考えて欲しい。差別するものが疑心によるならば、放射能被害の危険性を徹底的に検証して欲しい。被害者の心情を慮れば、それが誤解であると言うことを証明する労力はさしたるものではないか。そして報道して欲しい。「放射能が果して人にうつるのか。」を。

11年10月10日



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