Expedition概要



<計画概要>
隊の名称 : メイト・ポーラールーパー バフィン島登攀隊 1998

主  催 : 広島県山岳連盟             

目標の地域: カナダ北極圏、バフィン島、アウユイットゥク国立公園保護地区
目標の岩壁: フリーガ 1,2峰

目  的 : @北極圏における大岩壁のルート開拓
    Aウィーゼル谷を含むペニー氷床地域の探査
B新生ヌナヴーッ準州との国際交流

遠征期間 : 1998年6月下旬〜8月下旬

隊員構成 : 隊長;名越実
         登攀リーダ;山本茂樹、両粂輝正、
         宮重栄作、井上直子、新山まゆみ、木原めぐみ、溝手康史

推進組織 : メイト・ポーラールーパー(登攀隊のチーム名;極地の尺取り虫仲間)



左フリーガ手前から1,2,3峰。右アスガード北峰。中央がキングパレード氷河。



<活動概要>
1996.9 準備開始。(バフィン島に行った隊とコンタクト)
1997.2  第一回打ち合せ(名越、宮重、山本)
  7/6〜21 バフィン島偵察、調査(名越、井上)
  7/3  岳連行事として承認される
  9/13〜10/5 ヨセミテ合宿(両粂、山本、宮重、木原、新山)
  12/28〜1/4 九州行縢合宿(宮重以外全員)
1998.5/3〜6 坂根合宿(全員)



バフィン島見ゆ!(ハドソン湾上空より)

<遠征>
6/30 先発組(名越、宮重)出発、モントリオール着
     モントリオールにて買出し等
7/4  パンノットコ(パンニョータン)着
     買出し、ヘリコプター手配等
7/6  本隊(山本、井上、新山)出発
7/7  パンノットコ着




背後の丘からパンノットコと流氷の残るフィヨルド




7/10 キャラバン開始



アークティックサークル(北緯66°30′)。公園内唯一の標識





高差1200mを誇るあのトール壁が見えてきた



7/12 BC手前の峠着、クレバスに阻まれてBC予定地まで降りれず
7/14 隊荷と名越ヘリコプターにてキング・パレード氷河入り、BC建設



一回目の荷物を置いて飛び立つヘリコプター




<登攀活動開始>

1峰:正面は1996年に登られており、未登の西壁に新ルートを開拓することにする。
   山本、宮重、名越(24日より)



1峰正面から。我々のルートは右側





1峰西壁全景。ルートは右の雪壁中程から黒い筋(凹角)を左上してゆく




2峰:正面の大チムニーから右上の剣状ハングを経由するルートを計画。
   23日までは名越、井上、新山。24日からは両粂、木原、溝手が加わり、
   名越は1峰へ



2峰取り付き。





取り付きのハングとヘッドウォール




7/16 @取付きの大岩まで荷上げ
7/17 @大岩の整備、岩棚までフィックス
7/18 @<山本トップ>岩棚より雪渓ラインを登る(45m)
    A<名越トップ>取付き整備、大チムニーを詰めて右のスラブへ(50m)
7/19 @<宮重>暖傾斜のスラブを右上(15m)
    A<井上>右下へ振子し、クラックを直上(40m)



2ピッチ目をリードする井上直子




7/20 @<山本>右上の大凹角ハング目指してスラブを右上(15m)
    A<新山>巨大なフレークを登り小テラスへ(20m)
7/21 ホリデー、BCをアスガード寄りの水場近くへ移動
7/22 @<宮重>巨大凹角に入り、頭を押えつけられての登攀(20m)
    A<井上>クラックを直上(25m)
    A<新山>クラックを直上(20m)
7/23 @<宮重>さらにハング下を左上(20m)
    A<名越>小ハングを越えて大テラスへ(50m)
7/24 @<山本>なおもハング下を左上(15m)

* 短期参加の3名BC入り

7/25 @<宮重>凹角で苦戦、伸びず(8m)    



悪い凹角をリードする山本




    A<両粂>浅い凹角のコーナー(7m)
*好天期が終り、毎日雨雪交じりのバフィン空となる
7/26 @<山本>下部核心部を突破(40m)    
    A<木原>空白部の脆いフレーク(2m)

*米クライマーのJボウマン、JハーリンがBCを訪問

7/27 宮重、井上が@取付きへの荷上げ  チン
7/28 雨、@取付きのフィクス整備
    A<両粂>脆いフレークのフェイス(15m)
7/29 @<宮重>難しいハングから凹角(10m)
    A<溝手>フェイスからクラック(5m)、雨
7/30  雨、チン
7/31  雨、チン 

*単独のケベック青年がBCを訪問

8/1  @雨、山本、宮重でルート整備
    A井上、木原でルート整備、荷上げ
8/2 @<宮重>凹角を右へ越え左に振り子で次の凹角へ(40m)
    A<両粂>核心部のフレーク帯を突破しルートの見通しを付ける(30m)
8/3 @<山本>荷上げ、確保点整備後悪い凹角を登り第一テラスへ(35m)
    A<木原>シンクラックを直上(20m)



ラッペルする溝手



8/4 @GO−UP準備、休養(全ロープをフィクス、240m)
    A<両粂>ついに核心部を抜け「剣」上部のシェフの大テラスへ到達(50m)
8/5 @GO-UP、第一テラスへ全荷あげ、嵐襲来、ポータレッジ凧になる
    A<溝手>テラスまでの荷上げと大テラスのフィクス(20m)
8/6 @<名越>テラス右端の快適なクラックをリスが消えるまで(50m)



快適なクラックをリード




    A<両粂>凹角、クラック、スラブをフリーで2ピッチ伸ばす(90m)
8/7 @<宮重>雪化粧、左に振り、広いクラックに入り第二テラスへ(40m)
    A<井上>鉤鼻チムニーのリスからクラックを根性で伸ばす(50m)

8/8 A第二テラスへ荷上げ <両粂>腐った凹角、フレーク、ガラ場を4Pで肩に出て終了、U峰完登(140m)


8/9 @<山本>快適なクラックをハング下まで、雨 (50m) 休養



ぼく50才のバースデーを天空の城にて祝う



8/10 @<名越>ハング越え、チムニー、クラック、振子、小ハング越え(50m)
    A井上、新山にて回収、荷下げ

* 短期参加の3名BC発、帰路へ

8/11 @<宮重>上部空白帯のスラブを突破しヘッドウオールの大ハング下に(35m) 荷下げ終了
8/12 @大ハング下へ荷上げ、夜半暴風雨
8/13 @退却決定、雨中の荷下し、凄惨な撤退となる



最終となった11ピッチ目をリードする宮重



<結果>

・ 1峰西壁新ルート:壁の3/4にて敗退。(10P、500m、A4、5.9)
         (未完ながら)ルート名;大空のシーユー
・ 2峰正面:初登攀。(16P、560m、A3+、5.10a)
       ルート名;剣の舞い


<終了>

8/17 本隊BC発〜帰りキャラバン
8/19 パンノットコ着、ジェイコピー氏宅に投宿
     ひたすらヘリコプターの手配
8/26 本隊(名越を除く)パンノットコ発
8/27 ヘリコプターにてBCより隊荷をピックアップ
8/28 隊荷と名越パンノットコ発〜モントリオール着
8/31 本隊全員帰広