直線上に配置

女性の貧血

Matsuo OB&GYN Clinic

アイコン 貧血について
   ふらふらしたり、立ちくらみがすると貧血だと思われる方が多いのですが、その原因は貧血ではなく寝不足だったり疲労だったり低血圧だったりすることがほとんどです。もちろん貧血でもそのような症状がでるのですが、その場合はかなり重症の貧血や急激に発症した貧血が疑われます。
 ここでは貧血で一番多い
鉄欠乏性貧血について解説します。

 貧血とは血色素、ヘモグロビン(Hb)の減少です。Hbは赤血球の中に含まれていて、その中心には鉄元素がついています。鉄欠乏性貧血は鉄不足によってHbが作られない病態です。Hbは酸素を体の隅々まで運搬する機能をになっていますので、貧血になると全身に酸素が充分行き渡らなくなります。細胞は酸素の力を借りてエネルギーの産生をしていますから、細胞一個一個がへたってきます。

 女性では
Hb 11(g/dl)以下を貧血と診断します。
 飽食の時代にもかかわらず、食生活の変化やダイエットが原因で鉄欠乏性貧血は増加してきています。必要摂取鉄量は12mg/日ですが、現在の日本女性は7.8mg/日しか摂取していません。米国の女性は13.4mg/日です。20歳以上の女性の5人に1人は鉄欠乏状態あるいは鉄欠乏性貧血と推定されています。

アイコン 症状
   ふらふらや立ちくらみの症状は貧血ではむしろあまり見られないと書きましたが、では貧血の主な症状はと言うと、なんとなくだるい、気が進まない、活力がないという漠然とした症状です。
Tired woman syndromeというそうです。
直訳すると「疲労した女性症候群」、「お疲れぎみ女性症候群」でしょうか。鉄欠乏性貧血の人の多くが、疲れやすいなどの体調が悪いことに慣れてしまっています。鉄剤による治療によって貧血が治ると、今までは体調が悪かったのだと気づくこともあります。辛かった階段の昇り降りが楽になったりします。
 また鉄欠乏性貧血に特有な症状として、食べ物が舌やノドにしみたり、痛みがあったり、のみ込みにくいなどがあります。そのほかには舌が赤くなる、口角びらん(口の端がただれる)、爪に線が入るなどの症状もあります。さらに
土を食べたくなる異食症(pica)も知られています。

アイコン 治療
   鉄欠乏性貧血はまずその原因をつきとめることが大事です。鉄の入る量が少ないか出る量が多いか、そのどちらかが原因です。
30代以降の女性の場合では、長期間にわたる
過多月経が原因のことがほとんどです。過多月経の原因としては子宮筋腫が多いのですが、明らかな子宮筋腫がないのに生理が重い人もおられます。
 貧血の原因となっている疾患に対する治療鉄剤の補給が治療となります。鉄剤の補給方法は内服が原則です。静脈注射は非生理的な補給法であるため過剰投与やアレルギー反応が原因となって生じる肝機能障害の副作用に注意が必要です。
 鉄剤の内服により2週間程度で貧血はかなり改善します。貧血の原因疾患が対処できていれば、貧血の程度に関わらず4週間もすればほぼ正常値になります。消化管には必要量の鉄しか吸収しない防御システムがありますので、内服であれば過剰摂取の心配はありません。
 内服鉄剤の欠点は胃痛、便秘が生じることがあるという点ですが、現在の内服鉄剤はそのような副作用がおきないようにかなり改善されています。またお茶と一緒に服用しても吸収はそんなに落ちないのでお茶を制限する必要もありません。
 食事から鉄をとることは日々の食生活では大事なことですが、鉄欠乏性貧血の治療にはなりえません。なぜなら治療に必要な鉄量としてはあまりに不十分だからです。鉄欠乏性貧血では鉄剤の内服をしましょう。

アイコン 妊娠貧血
 妊娠すると出産時の出血に備えて血液量を増やす生理的変化が起きます。赤血球が増産され鉄の需要が高まります。さらに赤ちゃんに鉄が移行するため、ますます鉄欠乏状態となり鉄欠乏性貧血になりがちです。しかし、たとえお母さんが鉄欠乏状態でも鉄は一方的に赤ちゃんに移行するので赤ちゃんが鉄欠乏状態になることはありません。お母さんが鉄欠乏性貧血で問題となるのは、出産時の出血にたいして抵抗性がなくなること、妊娠中しんどい、だるいなどの症状がでることです。
 
 以前、ある1年間に広島県の主要病院で健診を受けられた全妊婦さんの末梢血液検査、いわゆる貧血検査のデーターを解析したことがあります。その結果わかったことは、見かけの貧血(水血症)が多いこと、しかし鉄欠乏性貧血も多く、その鑑別診断が必要ということでした。
 鉄欠乏性貧血の確定診断は鉄飽和度もしくは血清フェリチンの低下でなされるのですが、一般的に広く普及している自動血球計算機で算出されるMCV(平均赤血球容積)やMCH(平均赤血球血色素)の低下で鉄欠乏性貧血と水血症の鑑別診断がほぼ可能であることがわかりました。
 Hb 11g/dl以下、MCV 85以下、MCH 27以下ではほとんどの妊婦さんは鉄欠乏性貧血でした。一方 Hb 11 g/dl以下でもMCV、MCHが低値でなければ鉄欠乏はなく見かけだけの貧血(水血症)だったのです。
 鉄欠乏性貧血では一個一個の赤血球のサイズが小さくなること(MCV 85以下)、含まれる血色素も低くなること(MCH 27以下)、この小球性低色素性貧血は非妊娠時と同様に鉄欠乏性貧血の診断に有用であることがわかりました。

 妊娠すると赤血球が増加する以上に血漿も増加します。血漿は血液の液体成分ですから、濃度として表示される血色素濃度( Hb g/dl)が低くでることになります。これは生理的変化であり生理的水血症といわれます。この変化は必要なことであり、むしろこの変化が母体に起きないと妊娠中毒症や血栓症、胎児発育障害などの危険性が高まると言われています。鉄欠乏性貧血で鉄剤を服用してもこの変化は阻害されませんので、鉄欠乏性貧血のときは鉄剤を服用しましょう。

妊婦健診

サイトマップ
直線上に配置

広島市 松尾産婦人科内科医院