巌谷一六 巌谷一六字修。近江人。旧近江口藩士、書道の大家、天保五年三月生、年十六にして京都に到り医術を三角東園に学び帰藩後傍ら藩儒中村宗園に学ぶ、慶応四年微されて総裁局主管試補に任ぜられる。 後、内閣書記官。元老院議官、帝国制度取調委員を歴任。明治二十四年貴族院議員に勅選せられる。三十八年七月十一日病死。年七十一。 瑞宝章を受ける、号を金栗道人と称す、又在官の頃、十六の日は例として暇を賜る、以って一六居士の号有り。 巡視北海道中作 (一) 市街井劃道砥平。 市街井劃道砥平なり 雄府巍然聳巨甍。 雄府巍然とし巨甍を聳え 何日鑾輿此臨幸。 何れの日鑾輿す此に臨幸 経営壮麗北京城。 経営壮麗たり北京城 巡視北海道中作 (二) 逍遙獨出郭門行。 逍遙獨り郭門を出て行く 嘱目端無客感生。 嘱目すれば端無く客感生ず 温籍山容清冽水。 温籍山容清冽の水 依稀風景似西京。 依稀たる風景西京に似たる 十六夜観月戯作 姮蛾含笑出雲帳。 姮蛾笑を含み雲帳より出ず 一鏡分輝落酒巵。 一鏡輝を分ち酒巵に落つ 休道團圓佳節過。 道を休めよ團圓佳節過ぎると 破瓜最是足嬌姿。 破瓜最も是れ嬌姿に足れる 書 感 桜白桃紅次第春。 桜は白し桃は紅に次第の春 西陲三月尚兵塵。 西陲の三月尚を兵塵 誰知裾履紛如織。 誰が知る裾履紛とし織が如き 中有花前濯涙人。 中に花前涙を濯ぐ人有るを 早朝次神波主記韻 剣珮鏘鏘上禁門。 剣珮鏘鏘禁門に上る 千官朝拝賀三元。 千官朝拝三元に賀す 皇風曁遠況於遒。 皇風遠に曁況や遒よりも 聖徳握乹兼統坤。 聖徳乹を握し兼て坤を統す 日常卿雲和気縵。 日常卿雲和気縵たり 山擎瑞雪寿容尊。 山は瑞雪を擎げ寿容尊し 慚吾又在清斑末。 慚ず吾れ又た清斑の末に在するを 寸効何時得報恩。 寸効何時か恩に報じ得ん 2009/03/19 石 九鼎 |