聞一多集外。聞一多全詩集 

1899年11月24日~1946年7月15日。現代詩人、学者。本名家驊、湖北省出身、1922年からアメリカに留学、シカゴ美術館で絵画の研究および文学を研鑽、
早年先後青島大学、精華大学で教鞭を執った。1925年帰国後中国精華大学で教鞭を執った。抗日戦争期間。中国雲南省昆明市に疎開し大学を統合し
た西南連合大学で文学部長を務めた。

1943年後、当時の中国国民党政治の腐敗に抗議活動を行い独裁政治闘争に参加。民主的闘争を争取。抗日戦争結束後。1946年七月15日、
昆明市に於いて国民党特務機関に暗殺された。彼の著作は≪聞一多全集≫として朱自清等が編成された。


 
   真 我 集
  雨 夜
幾朶浮雲、杖着雷雨的勢力、              幾朶の浮雲、杖は雷雨の勢力を着け
把一個月亮、和満天的星、都掃尽了。         一個の月を 満天の星と、都て掃い尽した
一陣狂風還喊来要捉那些軟弱的樹枝、        一陣の狂風は還た喊び来て、それら軟弱な樹枝を捉ようとする
樹枝就拼命的来扭来扭去、同風抵抗。        樹枝は必死に扭じり来て扭じり去り、風と同じく抵抗する。

凶悪的風声、悲酸的雨声、                凶悪な風声、悲酸な雨声
我一辺聴着、一辺想着、                  私は聴きながら、一方で想う
一個雪片尋着了一株樹底時候、            一個の雪片 一株の樹底をを尋ねてた時
你好! ”他説ーー” 你可平安!           こんにちは!  君はとても元気ですね、と”彼は言うーー”
仮使現在夢要来尋我、                  もしも今 夢で私を尋ね来るなら
我一定要拉着他、不放他走,              私はきっと彼を引っ張って、彼が行くのを離さないでしょう
剜出心来、送給他礼物、                 剜ぐり出し来て、彼に贈り物を送りたい
要他永遠跟我做朋友。                  私は彼と永遠の友達と成りたいのだ

風還在樹里呻吟着、                    風は相変わらず樹里で呻ごめき吟じている、
泪痕満面的曙天、白得可怕、              泪の痕が満面の曙天に、白くなるのが恐ろしい、
我的夢還是没有做成。                  私の夢は相変わらず成っていない。。
原来真的、我已経討厭他們了、             もともと、、私はずぅと前から彼らが嫌いだったは本当なのだ
仮的就没有他們自己的価値嗎?            彼等自己の価値はドウなんだ? 嘘だ、それは無い


  忠 告
人説; ”月儿、你円似弾丸、欠似            人は言う; ”お月さま、あなたは円かで弾丸に似て、欠けて似た
   弓弦、円時雖美、欠的難観!                弓弦、円な時は美くしいと雖ども、欠けたのは見苦しい!
我説; ”月儿、円欠是你的常事、            ”お月様、円かで欠けたのは あなたの常の事と 私は言う
  你別存美丑底観念!                    あなたは別に美しさ 醜くさは底の観念!
  你欠到半規、 欠到蛾眉、 我還           お月さま あなたは欠けて半規に到り、欠けて蛾眉に到る、 私は還た
     是愛你那清光燦爛:                あなたの那の清光燦爛を愛してる
   但是你若怕丑、躱在黒雲里、            但し、お月さま、あなたは丑を怖がる若く身を黒雲里に隠す、
     不敢露面、                      敢えて面を露らわさない 
  我看不見你、便疑你像亀嚚底            私は あなたを見たくないと思う、あなたが亀嚚底のように疑うkらだ
  甲、蟾蜍底衣、夜叉底瞼。               甲たり、蟾蜍 底ぞ衣たり、夜叉 底ぞ瞼たる

   你 看 (春日寄慰在美的友人)
你看太陽象眠后的春蚕一様、            君 看てごらん 太陽は眠りの后の春蚕と同じであるようだ
鎮日吐不尽黄絲似的光芒;              鎮日 黄絲に似た光芒を吐き尽かさざるを
你看負喧的紅襟在電杆梢上、            君 看てごらん かまびしさに負う紅襟が電線の梢上に在るのを
酣眠的錦鴨泊在老柳根旁。             深い眠りの錦鴨は老柳の根旁で眠っている

略、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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朋友們、等你看到了故郷的春、              友人達よ 君らが故郷の春を見到るまで
怕不要老尽春光老尽了人;                 老い到ることをを恐れるな 春の光は人も老い尽す
朋友們、故郷能剝削你的生命、              友人たちよ 故郷は君の人生を剝削することが出来る
故郷有永不生銹的宝刀一柄。               故郷には永く生せざる銹びた宝刀一柄が有る

   我是中国人
我是中国人、我是支那人、       私は中国人だ、私は支那人だ
我是黄帝底神明血胤、          私は黄帝の神明血胤である
我是地球上最高所来的、        私は地球上 最高の処から来たのだ
帕米尓便是我的原籍。         帕米尓'が便わち私の原籍である         帕米尓(パミール高原)


以下、略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・         
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  秦始皇帝
荊軻的匕首、張良的大鉄椎、                荊軻の匕首、張良の大鉄椎
是両只蒼蝿総我眼前飛過、                 両つの蒼蝿は私の眼前から飛び過ぎた
我肋骨檻里因着一只黒狼、                 私の肋骨は檻里 一匹の黒狼に因らわれている
這一只黒狼他終于殺了我。                 この一匹の黒狼、彼は終に私を殺した

以下、略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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     旧体詩賦 (現代経典作家詩文全編書系) 聞一多詩全詩集。

   擬李陵与蘇武詩三首 (一)  p303
送子止河梁、 日暮難前之、   送子 河梁に止どまり、 日暮 前に之き難く
老馬蕭蕭鳴、 掉尾作長辞。   老馬 蕭蕭として鳴く  尾を掉いて 長辞を作す
明日行路難、 便当長相思、   明日 行路の難  便ち当さに長えに相思なるべし
路悪有時盡。 相思無殺時、   路悪 時に盡く有り  相思 時に殺 無く
帰時慰妻拏、 団欒或有期。   帰時 妻拏を慰む  団欒 或は期あり

   読羽項本紀  p305
垓下英雄仗剣泣、    垓下の英雄 剣に仗りて泣く
淫淫泪湿烏江萩、    淫淫として泪だ湿る 烏江の萩
早知天壤有劉邦、    早と知る 天壤して 劉邦 有るを
寧学呉中一人敵?    寧ろ 呉中 一人の敵を学ばん

   春 柳  
垂柳出宮斜、   垂柳 宮を出て斜めなり
春来盡発花、   春来 花 発き盡き
東風自相喜、   東風 自から相い喜こぶ
吹雪満山家。   吹雪 満山の家。   

   月夜遣興
二更漏盡山吐月、   二更 漏盡 山 月を吐く
一曲玉簫人倚楼。   一曲 玉簫 人 楼に倚る
為怡海棠偸睡去、   為に怡こぶ 海棠 睡を偸んで去ることを
多心蟋蟀鳴不休、   多心の蟋蟀 鳴いて休まざる

   七夕閨詞     
卍字回文綉不成。    卍字の回文 綉 成らず
不愁泪滴杏腮盈。    愁えず泪滴たり 杏腮盈つる
停針嘆道痴牛女。    針を停めて嘆いて道う痴牛女
修到神仙也有情。    修ない到る神仙 也た情あり

   維摩寺      
維摩古寺天下名、    維摩古寺 天下の名
金栗堂前午蔭清、    金栗堂前 午蔭 清し
山禽楚雀皆梵響、    山禽楚雀 皆な梵響
金竈石壇非世情、    金竈石壇 世情に非らず
説法天仙思縹渺、    法を説く天仙 思い縹渺
随縁満鬼憶獰佇、    縁に随う満鬼 獰佇を憶う
遊人不識広長舌、    遊人 識らず 広長舌
小立清渓聴賛声、    清渓に小立して聴いて声を賛する

   北郭即景   
傍郭人家竹樹囲、    郭に傍る人家 竹樹囲む
驕陽卓午盡関扉、    驕陽たる卓午 関扉を盡す
稲花香破山塘水、    稲花 香破す山塘の水
翠羽時来拍浪飛、    翠羽 時に来たりて 浪を拍いて飛ぶ

   廃旧詩六年矣、復理鉛槧、紀以絶句
六載観摩傍九夷、    六載 観摩 九夷に傍る
吟成鴃舌総猜疑、    吟成る鴃舌 総て猜疑
唐賢読破三千紙、    唐賢 読破す三千紙
勒馬回彊作旧詩。    馬を勒す回彊 旧詩を作す

   釈 疑     
芸国前途正杳茫、    芸国の前途 正に杳茫
新陳代謝費扶将,    新陳代謝 将を扶し費す
城中戴髻高一尺、    城中 髻を戴せる高さ一尺
殿上垂裳有二王。    殿上 裳を垂す二王あり
求福豈堪争棄馬、    福を求めて豈に堪んや争うて棄馬
補牢端可救亡羊。    牢を補ろい可に端す亡羊を救う
神州不乏他山石、    神州 乏しからず他山の石
李杜光芒満丈長。    李杜 光芒たり満丈の長

   天 涯     
天涯閉戸賭清貧、    天涯 戸を閉ざし 清貧に賭す
斗室孤灯萬里身。    斗室 孤灯 萬里の身
堪笑連年成底事、    笑うに堪えたり連年 底事を成す
窮途舎命作詩人、    窮途 舎命 詩人と作す


聞一多の末裔(外孫)には、優秀な子孫が多く、中国社会科学院近代史を研究,されていた聞少華副教授(先年退職された)、
先年、恰も春節の際、ご夫妻に拝謁、その後、著書を数冊を頂き多大な恩恵を受けた。又、聞少華先生を引き合わせて頂いた
末弟の聞立鼎氏は蘇州大学から先年、北京の中国社会科学院近代史を研鑽され印刷局にも従事されている。

聞立鼎先生とは≪広島大学留学時≫から恩恵を受け、古書≪初学記≫を始め多くの著書を頂き彼の造詣の深さに感銘を受ける、
古き朋友である。≪聞一多詩集≫を世に問う機会あれば思いつつも、今回、聞一多詩全集を入手。詩集の上棟に扱ぎつけた。

                   石 九鼎  09/03/05.