田能村竹田
田能村竹田(1777~1835)名は孝憲。字を君○ち言う。豊後国(大分県)竹田村の出身。家は代々、岡藩に仕えた奥医師であった。竹田は早くから藩の学問所由学館に勤務し、同時にその家業の医師を廃業して儒学を専一に修めるようにとの藩の命令を受けた。竹田は文化二年に藩の許しを得て、長崎、熊本、に遊びついに、京都に遊学して、村瀬栲亭の塾に入った。そこで浦上玉堂、岡田米山人のような画家と知りあった。
春陰 雨余風暖逼清明。 雨余 風暖くして 清明逼る 天似将晴却未晴。 天 将に晴れんとするに似て 却って未だ晴れず 蚕豆弧瓜栽恰好。 蚕豆 弧瓜 栽るに恰も好し 才降種子即時生。 才かに種子を降せば 即時に生ず
春雨 緑煙翠霧暖霏々。 緑煙 翠霧 暖 霏々たり 軒外海棠紅欲飛。 軒外の海棠 紅 飛ばんと欲す 半袖蓋頭花底立。 半袖 頭を害うて 花底に立つ
却憐糸雨湿吾衣。 却って憐む 糸雨の吾が衣を湿らすを
春月 吹滅書灯已掩紗。 書灯を吹き滅して 已に紗を掩う 暖蟾結暈淡無華。 暖蟾 暈を結んで 淡として華なし 朦朧才惜半欄影。 朦朧 才あに惜む 半欄の影
斜倚西廂看落花。 斜めに西廂に倚って 落花を看る
春水 村在茫茫渺渺間。 村は茫茫 渺渺の間に在り 菰蒲楊柳緑如山。 菰蒲 楊柳 緑 山の如し 毎春四澤雨添後。 毎春 四澤 雨を添うるの後
常向虎頭句裏還。 常に虎頭句裏に向って還る
城南看桃 春似逝波同不還。 春は逝波に似て 同じく還らず 流光転覚客心関。 流光 転た覚ゆ 客心に関するを 桃花紅與梅花白。 桃花の紅と梅花の白と 両様東風一雨間。 両様 東風 一雨の間
間歩
雨休蘺外夕陽明。 雨休みて 蘺外 夕陽明るし
梔子花開晩気清。 梔子花開きて 晩気清し
地僻無人争一路。 地 僻にして 一路を争う無し
短筇随意看雲行。 短筇 随意 雲を看て行く
◇随意: ままよ、ほっておけ。 亦、さもあればあれの意。
暁行
身輿秋蓬相共軽。 身は秋蓬と 相い共に軽し
東征賦了賦西征。 東征賦し了って 西征を賦す
錆磨未尽輪蹄鉄。 錆磨 未だ尽きず 輪蹄の鉄
店月橋霜又上程。 店月 橋霜 又た程に上る
晩出城西遇佛寺
偶尋旧経到僧房。 偶ま旧経を尋ねて 僧房に到る
萬地荒涼已有霜。 萬地 荒涼として 已に霜あり
風磬一声敲断後。 風磬 一声 敲き断る後
夕陽秋色雨茫茫。 夕陽 秋色 雨 茫茫たり
秋詞
迢迢烟浪暮江頭。 迢迢たる烟浪 暮江の頭
碧社紅蘭無限秋。 碧社 紅蘭 限り無きの秋
屈恨宋悲縁底事。 屈恨 宋悲 底事に縁る
好看明月上南楼。 好し看ん 明月の 南楼に上るを
08/11/19 i石 九鼎 著す |
春陰 雨余風暖逼清明。 雨余 風暖くして 清明逼る 天似将晴却未晴。 天 将に晴れんとするに似て 却って未だ晴れず 蚕豆弧瓜栽恰好。 蚕豆 弧瓜 栽るに恰も好し 才降種子即時生。 才かに種子を降せば 即時に生ず
春雨 緑煙翠霧暖霏々。 緑煙 翠霧 暖 霏々たり 軒外海棠紅欲飛。 軒外の海棠 紅 飛ばんと欲す 半袖蓋頭花底立。 半袖 頭を害うて 花底に立つ
却憐糸雨湿吾衣。 却って憐む 糸雨の吾が衣を湿らすを
春月 吹滅書灯已掩紗。 書灯を吹き滅して 已に紗を掩う 暖蟾結暈淡無華。 暖蟾 暈を結んで 淡として華なし 朦朧才惜半欄影。 朦朧 才あに惜む 半欄の影
斜倚西廂看落花。 斜めに西廂に倚って 落花を看る
春水 村在茫茫渺渺間。 村は茫茫 渺渺の間に在り 菰蒲楊柳緑如山。 菰蒲 楊柳 緑 山の如し 毎春四澤雨添後。 毎春 四澤 雨を添うるの後
常向虎頭句裏還。 常に虎頭句裏に向って還る
城南看桃 春似逝波同不還。 春は逝波に似て 同じく還らず 流光転覚客心関。 流光 転た覚ゆ 客心に関するを 桃花紅與梅花白。 桃花の紅と梅花の白と 両様東風一雨間。 両様 東風 一雨の間
間歩
雨休蘺外夕陽明。 雨休みて 蘺外 夕陽明るし
梔子花開晩気清。 梔子花開きて 晩気清し
地僻無人争一路。 地 僻にして 一路を争う無し
短筇随意看雲行。 短筇 随意 雲を看て行く
◇随意: ままよ、ほっておけ。 亦、さもあればあれの意。
暁行
身輿秋蓬相共軽。 身は秋蓬と 相い共に軽し
東征賦了賦西征。 東征賦し了って 西征を賦す
錆磨未尽輪蹄鉄。 錆磨 未だ尽きず 輪蹄の鉄
店月橋霜又上程。 店月 橋霜 又た程に上る
晩出城西遇佛寺
偶尋旧経到僧房。 偶ま旧経を尋ねて 僧房に到る
萬地荒涼已有霜。 萬地 荒涼として 已に霜あり
風磬一声敲断後。 風磬 一声 敲き断る後
夕陽秋色雨茫茫。 夕陽 秋色 雨 茫茫たり
秋詞
迢迢烟浪暮江頭。 迢迢たる烟浪 暮江の頭
碧社紅蘭無限秋。 碧社 紅蘭 限り無きの秋
屈恨宋悲縁底事。 屈恨 宋悲 底事に縁る
好看明月上南楼。 好し看ん 明月の 南楼に上るを
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