柚木 玉邨
柚木玉邨。名は方啓、字は爰。玉邨と号す。通称は梶雄。岡山県浅口郡玉島町出身。(現在は倉敷)農業大学を卒業し、農業技師十五年位従事。早くから南画家となり自由な生き方をされた。

田辺碧堂とは従兄弟であり、碧堂っも南画を玉邨に受けた。柚木玉邨は詩・書・画三絶を以て鳴る。詩調の正しさは学ぶに足りる。著書に『玉邨詩賸稿』。『玉邨蘭竹』などがある。


   自題蘭竹図
扁舟曾訪楚江秋。     扁舟 曾って訪う 楚江の秋
竹色斑斑蘭気幽。     竹色 斑斑として 蘭気幽なり
不作瀟湘三日泊。     瀟湘 三日の泊を 作さずんば
何知天地有詩愁。     何ぞ知らん 天地 詩愁有るを

   
題拝梅矼図。
亡友坂田九峰西川書屋庭中有古梅図。枝垂矼上人過必低頭。九峰亦別号拝梅花人。

   拝梅矼の図に題す。
亡友坂田九峰の西川書屋庭中に古梅図あり。枝は矼上に垂れ・人過れば必ず低頭す。九峰また別に拝梅花人と号す。


寂寞西川墅。    寂寞西川墅
空懐畴昔春。    空しく懐う 畴昔の春
矼頭花尚発。    矼頭 花 なおも発くも
不見拝梅人。    梅を拝する人は見えず

  将遊支那有此作      将に支那に遊ばんとして此の作あり
萬里去探蒼海珠。     萬里 去りて探る 蒼海の珠
白雲明月杳蒼梧。     白雲 明月 蒼梧 杳かなり
平生我学董源法。     平生 我は学ぶ 董源の法
欲写江南入画図。     江南を写して 画図に入れしめんと欲す 

   少林寺分韻
白社当年幾度陪。     白社 当年 幾度か陪し
叢梅花下共伝杯。     叢梅 花下 共に杯を伝えし
春寒二月少林寺。     春寒 二月 少林寺
重向碑前酹酒来。     重ねて碑前に向って 酒を酹いで来る

   南 京
江上六代迭興亡。     江上 六代 迭いに興亡
結綺臨春蹟已荒。     結綺 臨春 蹟すでに荒る
剰得斎梁金碧色。     斎梁 金碧の色を 剰し得て
萬株揚柳乱斜陽。     萬株の揚柳 斜陽に乱れる

   洞 庭
雁声揺落楚雲間。     雁声 揺落 楚雲の間
葉葉風帆去又還。     葉葉 風帆 去って又 還る
晩自岳陽楼上望。     晩に岳陽 楼上より望めば
遥青如黛是君山。     遥青 黛の如き 是れ君山

   沅 湘
西風吹老楚江秋。     西風 吹いて老いる 楚江の秋
暮色蒼然帯古愁。     暮色 蒼然 古愁を帯びる
欲弔霊均采蘅杜。     霊均を弔わんと欲して 蘅杜を采る
空歌哀些坐扁舟。     空しく哀些を歌って 扁舟に坐す

   08/11/22     石 九鼎   著す
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