漢 詩 作 詩 講 座  (16)

◇鑑識眼を養う

◇古来,唐代の圧巻と知られる漢詩・4章がある。漢詩愛好者ならずとも,萬人が認めるところである。「送元ニ使安西 ・王維」 「下江陵 ・李白」 「長信秋詞 ・王昌齢」 「凉州詞 ・王之渙」漢詩鑑賞には時代背景を知り,研究為さずして語ることは出来ない。何故,圧巻4章と称されるのか吟味することが必要であろう。

◇杜甫は愛国心、リアリズムの詩を多く書いた。学問は該博,性情は眞摯,詩は至誠の流露したもの,「後前出塞詩 「三吏三別」「哀王孫」「秋古興八首」「登高」「岳陽楼」等,読めば,覺えず襟を正す。十中八九時事に関している。李白超逸な天才にまかせて詩を作る,「遠別離」「蜀道難」又,李白は絶句に妙を得て「早発白帝城」「遊洞庭湖」「峨眉山月歌」「山中問答」「静夜思」等名作が残る。

詩聖・杜甫。 詩仙・李白。ほか,唐時代の詩人は煌く星の如く(初唐・中唐・盛唐・晩唐)ここに,漢詩は開花した。宋代に到り唐詩の模倣を脱却せんと試みる。故に宋詩に理屈っぽい詩が多いのも特徴の一つ。明・清代は唐代の各宗師の流れを汲む詩流が一時期,みられる。

諸家の漢詩を吟味する内,自分好みの詩人,興味を覚える詩人に出会う,詩人それぞれ特徴を持ち合わせている。好みの詩人の詩集を吟味する。清朝の詩は漢詩規律に正常に近いものが多い。初学者の漢詩作詩上達の近道は『換骨奪胎』法,と言はれる。古来この『換骨奪胎』法は随所にみられる。

◇漢詩に限らず,絵画,書道,彫刻,建物,音楽,あらゆる芸術性豊かなものに興味を持ち,其の中の一級品と称されるものを鑑賞する。「感性を豊かにし,見る,読む,眼を養う」。二流品,三流品には,一切興味を示さないこと。一流と称するものが,何故一流品なのか,自問自答から始める。

◇文化・文政の頼山陽・梁川星巌ら巨匠は唐詩から宋 明・清を窺い、自分自身の詩風を確立せんと試み,星巌は清の殊L詩集を、山陽は袁枚詩集を机案に収め愛読した。

◇日本漢詩と中国漢詩を比較し,論議されて来た。当然中国2000年の歴史がある以上,優劣は言わずもがな,然し初学者が最初に手を染め,鑑識眼を養うには,日本漢詩も優秀な作品も多い。

先哲者の漢詩集』が漢詩衰退時期の今日,参考になることは大である。明治中期に着いて論ずれば格調派・漢魏六朝を標榜とした「副島蒼海・小野湖山・亀谷省軒・依田百海・長尾雨山・国分青崖・本田種竹・桂湖村」。性霊派「森槐南・永坂石(土隶)・野口寧齊・大久保湘南・等」など吟味し鑑賞して研鑚するを一考として奨励したい。

清・明・宋・唐詩と調べる順序が,漢詩作詩最良の近道とされている。当然,唐詩は燦然と輝く綺羅星く我々に漢詩の妙味を与えて来た。反面,唐詩調の物真似に成り易い。唐詩一辺倒の研究作詩家に多い。

「唐詩選」と名の就く解説書は巷に溢れている。時代の変遷に関係無く,累々と継承され出版される。評論は容易,然し「自からの論理性が示されて無い」。即ち「自論が無い」。漢籍書類を選ぶには充分に吟味して購入することが必要であろう。最近・東洋文庫から森槐南著・杜甫講義・李白講義の復刻本が出版されている。良書は時代に関係なく愛好者に歓迎される。


◇年号が『尚書』で由来するように、我われ日本人は漢字文化の恩恵を受けてきた。現在,漢字の国・中国の小学生に執って,第一関門は小学校六年間で学ぶ漢字が約3000〜4000文字。1年次・(発音符号の)ピンインを約2000文字を集中的に修得する。漢字と符号のピンインの確実・速写性とが,中国の小学生1・2年次の最重要時期の修得。2年次でピンインを漢字に記憶する。

ピンインの記憶には速写,書いて書いて書きまくって記憶する,猛烈な速写は鉛筆の芯は瞬く間になくなるとさえ言う。幼稚園時代からピンイン(発音符号)を取得させる所が多い。発音符号を徹底的に頭脳に叩き込む,由って中国人の「英語」の発音の良さは茲に起因する。抜群の英語能力は日本人の比では無い。中国幼児期は相当の智力を用する。




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