漢 詩 作 詩 講 座  (3)

『韻府』
韻府と言うのは,中国のあらゆる文字をことごとく,包含されている。そして,悉く,別けてあり平声の韻,又,上声の韻と言うように,みな納められている。韻は音節によって文字を類別したもので,文字には必ず平仄がある。詩の生命は全て平仄にある。

この韻本を見ずして,平仄を解ろうとすると,仲なか難しい。辞書に依らずして作詩しようとしても,出来ない。「韻書」,これを一覧すれば訳なく解る。この韻本について四声を分けて韻脚を追って,どの韻の中に,どの文字が納められているか,と言う事が解れば,それで,平仄は訳なく解る。
『漢詩の規則』について。
七言絶句。誰でも知っている,李白の「早に白帝城を発す」

       ○○ ●● ●○◎
(起句)  朝辞 白帝 彩雲間。ーー(韻)

       ●● ○○ ●●◎,
(承句)  千里 江陵 一日還。ーー(韻)

      ●● ○○ ○●●
(轉句)  両岸 猿声 啼不住。

      ○○ ●● ●○◎
(結句)  軽舟 已過 萬重山。−−(韻)

(起句)朝まだ明けぬうちに,白帝城を朝焼けの雲の間に見ながら後にして,(承句)千里も下流にある江陵に,その日に着いた。(轉句)途中,両岸の切り立った崖で遊んでいる猿のなき声が,終わらないうちに,(結句)私が乗っている小舟は早くも重畳たる山の間を通り過ぎている。(白帝城は2003年6月水没)

○は平。 ●は仄。 ◎は韻。(上平声十五刪の韻)

二字と二字と三字」。漢詩には一句のうちに,二字,二字,三字と切れ目があることに注意したい。第三句で,両岸の猿が,声は啼いてやまず,と読んだら,漢詩の大切な規約を知らない事になる。然し例外はある,これは大家のすることで,変化を求めてワザトする。初学者のやるべきことではない。

各句の「下三字」について見ると(彩雲間,一日還,啼不住,萬重山,)三字は,もともと,二字と一字とで出来ている。一字と二字,と言っても好い。三字の漢字はない。即ち,副詞に述語が付いたものと,述語に動詞が付いたもの,辞書を調べれば,一目瞭然解る。

詩には必ず「」と言うものが踏んである。李白の「早に白帝城を発す」の各句の最終の文字。間カン。還カン。山サン。一定の響きをもっている。住ジュウ,は響きが違う。即ち1,2,4,句は同じ響きである。
音で読んだときと,訓で読んだ時で違う。訓読しなければ,ならない所でも音で読んで,ひびきが合っていたら,韻が踏んである,と考えれば好い。と一応の理解が出来る。然しこれは仲々難しいところで,韻が合っているか,どうかは,辞書を見て決める。

間,還,山,の三字は字書では,
が(刪韻・平)と(諫韻・仄)。は(刪韻・平)と(先韻・平)。は(刪韻・平)。上平15刪の韻と解る。

韻字は転句を除く外,起承結句の末尾に押用する。三字よも同韻の文字に限る,例えば一東の韻ならば三字とも“東”の韻字。ニ冬の韻ならば三字とも“冬”も韻字。但し通韻は例外である。

然し,いちいち「韻」を字書で調べるのは大変である。時間もかかる。ここに便利な物がある。「韻字表」と言うものがある。韻字表,詩語表,はどこで手に入れるか,僅かに入手先が記載されている。

平仄の付いた辞典として@『新字源』小川環・西田太一郎・赤塚忠。著。角川書店。が漢詩愛好者が最も多く使用し且つ,普及している。又,A『詩語表付き,漢詩の作り方』太刀掛呂山著。があれば,誰でも漢詩は作られる。B詩韻含英異同辨。C圓機活法。このニ書は韻を網羅し,平韻,仄韻別に二字,三字と区分けされ,作詩に便利な参考書。

ABCは,「日本の古本屋」
       http://www.kosho.or.jp/servlet/bookselect.Kihon_result
で求めることが出来る。@は新刊書店。

『新字源』角川書店,が何故,良書で漢詩愛好者に愛用されいるか,それは著者,小川環・西田太一郎・赤塚忠,先生らが立派な漢詩を残している。漢詩が解っている人の辞書は尊い,役立つ。

『詩韻含英異同辨』。この書が惹ければ,始めて「漢詩作り」は一人前と言はれている。両韻も解る。更に,『圓機活法』で韻脚,詩語を研鑚してゆけば,韻脚はマスターできできる。



      
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