漢 詩 作 詩 講 座  (5)    石九鼎の漢詩館

何処から書き始めるか?

先ず着想が出来たら,結句から轉句へ,轉句から結句,轉句,結句が出来たら推敲しておく,次ぎに起句,承句と手をつける。何故,結句・轉句から始めるのか?,初学者は不思議に思うだろう,然し,この方法は“詩壇千古の定律”とされている。

先哲者の作詩法に及ばず中国の指導書にも書いている。そのほうが好い詩が出来る。起・承から順序に作ると,必ずと言って好いほど,頭デッカチ尻スボリ式の詩になってしまう。

上達すれば,どこから作っても好い。然し,上達すれば,するほど轉・結から作るのが好いと解る。五言絶句も然りである。一般的に起・承と轉・結が別々な一つのまとまりが必要である。轉・結でまとまった,詩の内容が必要で,起・承はそれを起こすに相応しい内容となる。

『詩に別才あり,書に関するに非ざるなり,詩に別趣あり,理に関するに非ざるにあり,然れども多く書を読み,多く理を窮めなければ,則ち其の至るを窮めることは出来ない』滄浪詩話の一語。後人その後半の語に重きを置く,以って緒家の公案とする。と言う。

起・承・転・結,のことに着いて,頼山陽が結句法を初学者に教えるのに例にとって言った言葉がある。

京都三条 糸屋の娘,
姉は十八 妹は十六,
諸国大名は弓矢で殺す,
糸屋の娘は目で殺す,

京都三条 糸屋の娘,で筆を起こす,姉は十八 妹は十六,この姉妹,齢は十八と十六で有ると言うこを述べて起句を受けた。諸国大名は弓矢で殺す,糸屋の娘に何の関係もない諸侯のことを出す。糸屋の娘は目で殺す。

糸屋の娘は,の五字を出して起句,承句を顧み,目で殺すに四字を出して転句を顧み,全篇を収束した。蓋し名言ではないか。それにしても,糸屋の娘が,どんな別嬪か見てみたい気がする。そこで例題を一つ。

題目は晩春。暮春即事。暮れ行く春の情景を詩にするが,山寺とか田園とかの字面が題に添うてあれば,それを詩中にいれること。一首に完成する予習。是非試みて,実力をお試し願いたい。七言絶句。

○○  ○○  ○○  ○○  ○●  ○●  ●●  ●●
風軽  炊煙  残陽  村童  堤柳  孤上  跨在  一路

●●○   ●●○   ●○○   ○○●
蹈落花   燕子斜   隔林家   帰牛背

花・斜・家,が韻脚だと解る,(下平声。六麻)。「帰牛背」が転句の三字目も理解できる。帰牛背の上に来るものは仄仄または平仄。と解る則ち ◇● 帰牛背。順次,平仄に合わせて詩語を積立ててください。@

次ぎは,題目は「賞春」春を賞す。A
○○  ○○  ○○  ○●  ○●  ○●  ●○  ●●
春風  閑門  年年  要路  唯有  芳草  和烟  点検

●●○  ●●○  ●○○  ○○●
不世情  暖更青  一時生  人間事

解答@
堤柳風軽燕子斜。  堤柳の風軽く燕子 斜なり
炊煙孤上隔林家。  炊煙 孤上す林を隔てる家
村童跨在帰牛背。  村童跨って帰牛の背に在り
一路残陽蹈落花。  一路残陽 落花を蹈む


解答A
芳草和烟暖更青。  芳草 烟に和して暖更に青く
閑門要路一時生。  閑門 要路 一時生
年年点検人間事。  年年 点検す人間の事
唯有春風不世情。  唯だ春風の世情あらざる有り



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