漢 詩 作 詩 講 座   (6)    石九鼎の漢詩館

起句に限り韻字を押用しないこともある。これを押落(ふみおとし)と言う。七言で言えば押落を変例とし,五言に在lっては押韻を常則とする。押韻の場合には,下三字に●○○は○○●に変える,◇●○は○●●と変える。押落にも自ずから制限がある。

前対格
前対格とは起・承の二句を対句にするもので,押落(ふみおとし)とすることを常則とする。
湖上初雨   蘇東坡
●○●●○○●
水光瀲艶晴偏好。   水光 瀲艶 晴 偏えに好し
○●○○●●○
山色空濛雨亦奇。   山色 空濛 雨 亦た奇なり
●●○○●○●
欲把西湖比西子。   西湖を把って西子に比せんと欲っす
●○○●●○○
淡粧濃抹両相宜。   淡粧 濃抹 両つながら相い宜ろし

有約  司馬光
○○○●○○●
黄梅時節家家雨。   黄梅の時節 家家の雨
○●○○●●○
青草池塘処処蛙。   青草の池塘 処処の蛙
●●●○○●●
有約不來過夜半。   約あり 來たらず 夜半を過ぐ
○○○●●○○
間敲棋子落燈花。   間に棋子を敲けば燈花 落つ

後対格
後対格は転結二句の対句で結ぶので対結とも称す。
漫興   杜甫
○●○○●●○
腸断春江欲尽頭。   腸わたを断つ春江 尽んと欲するの頭
○●○○●●○
杖黎徐歩立芳洲。   杖黎 徐歩して芳洲に立つ
○○●●○○●
顛狂柳絮随風舞。   顛狂の柳絮 風に随って舞う
○●○○●●○
軽薄桃花逐水流。   軽薄の桃花 水を逐て流れる

春宵  蘇東坡
○○●●●○○
春宵一刻値千金。   春宵一刻 値い千金  
○●○○●●○
花有清香月有陰。   花に清香有り 月に陰あり
○●○○○●●
歌管楼臺声細細。   歌管 楼臺 声え細細
○○●●●○○
鞦韆院落夜沈沈。   鞦韆 院落 夜る沈沈

五言絶句平仄式
 仄起式(正格)
起句   ◇● ○○●           ◇⇒平・仄を問わず。○⇒平韻。  ●⇒仄韻。
承句   ◇○ ◇●◎ーー韻字
転句   ○○ ○●●
結句   ◇● ●○◎ーー韻字

 平起式(偏格)
起句   ◇○ ○●●      ◇は平・仄どちらでも好い。
承句   ◇● ●○◎ーー韻字
転句   ◇● ○○●
転句   ◇○ ◇●◎ーー韻字
 五言絶句は押落としを常則とし,又,第二字の孤平を避ける。踏み落とし,と言うのは起句の最後の字を仄韻にすること。第二字の孤平を避ける。は4句中孤平は禁止。

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演習@
○○  ○○  ○●  ●●
春風  労労  天下  不遣(しめず)

●○○   ○○●   ○●●   ●●○
柳条青   傷心處   知別苦   送客亭
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演習A
○○  ○●  ●○  ●●
高陽  春色  出門  可歎(たんずる)

○○●     ○●●     ●●○   ●○○
無知己     何所見     一酒徒   満平蕪
(知己なき)  (何の見る所)        (平蕪に満つ)
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演習B
○○  ○○  ●●  ●●
清猿  楓林  別後  楚水

●○●   ○●○      ●○●       ●○○
已愁暮   無断時      冷山月       復堪悲
     (断える時無し) (山月冷ややか) (復悲しむに堪えたり)

句法。句法の変化を知ること。
詩中の句は,絶句ならば,七言は七字,五言は語字を以って一句を成しているが,句読を分析して言えば,七字,五字の中,また一字を以って句をなしているものもある。三字,四字,五字,六字を以って句を為しているものも有る。詩中のニ句,五言ならば十字,七言なれば十四字を以って一句を為しているものも有る。例えば,

莫道古来多計策。   道う莫れ古来 計策多しと
攻成唯有李将軍。   攻成りて唯だ李将軍あり

この例は沢山ある。珍しいことでもない。五言なら十五字,七言なら二十一字で一句をなすものもある。

李白が「越中懐古」
越中句践破呉帰。   越中句践 呉を破って帰る
義士還家尽錦衣。   義士 家に還って尽く錦衣
宮女如花満春殿。   宮女 花の如く春殿に満つ
只今惟有鷓鴣飛。   只今惟だ鷓鴣の飛ぶ有り

演習@の解答
天下傷心處。  天下 傷心の處
労労送客亭。  労労 客亭を送る
春風知別苦。  春風 別苦を知る
不遣柳条青。  柳条をして青から遣めず
  李白の詩。労労亭。

演習Aの解答
出門何所見。  門を出て何の見る所ぞ
春色満平蕪。  春色 平蕪に満つ
可歎無知己。  歎ずべし 知己なきを
高陽一酒徒。  高陽の一酒徒
  高適の詩。 田園春望。

演習Bの解答
楓林已愁暮。  楓林 已に暮に愁う
楚水復堪悲。  楚水 復た悲に堪える
別後冷山月。  別後 山月 冷ややかに
清猿無断時。  清猿 断ゆる時なし
   王昌齢の詩, 送張四。

古来,五言絶句は古意古調の風韻を出すべきとされ,七言絶句を作詩するより,難しいとされている。七言絶句から,二句削ったものが五言絶句では無い。王維,柳宗元など五言絶句などの秀作を研鑚し作詩に執りかからなければならない。詩は体を表すと言う。膽に銘じたい。




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