漢 詩 作 詩 講 座   (7)   石九鼎の漢詩館

題目。梅雨
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清陰  黄梅  臥披  家童  時節  昨日  最可  枕上

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両三竿  覚微寒  詩巻看  新洗竹
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中国南宋の周弼(しゅうひつ)が(三体詩)に掲出した絶句の作法は,起,承,転,結,の4句よりなるが,短いこの詩型に変化をもたらし,境地を無限に拡大するには,第三句⇒転句における転換にある。第三句に「実」の句をおくか,「虚」の句をおくかによってニ類に分かれる。

絶句の出来ばえの善し悪しは,第三句にかかっている。第三句の転換を軽視すると全体が平板になり,屈折がなくなる。第三句に具象的な事柄を詠じて場面を転換し,主に叙景を述べて一,ニ句に続ける,これが「実接」。「虚接」は情思を以って接するものと対置する。

絶句法は,(1)実接法,(2)虚接法,(3)用事法,(4)前対体,(5)後対体など。下記に作法の概略を挙げて漢詩愛好者の敬発の一端に供したい。

(1)総提法。第1句を総提して,以下3句において叙述する法。
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故人西辞黄鶴楼。  故人 西のかた黄鶴楼に辞す
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煙花三月下楊州。  煙花 三月 楊州に下る
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孤帆遠影碧空尽。  孤帆 遠影 碧空に尽き
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惟見長江天際流。  惟だ見る長江の天際に流るるを

(2)総結法。(1)と反対に第3句を以って総結する法。
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葡萄美酒夜光杯。  葡萄の美酒 夜光杯
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欲飲琵琶馬上催。  飲まんと欲すれば琵琶 馬上に催す
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酔臥沙場君莫笑。  酔うて沙場に臥すも君 笑うこと莫れ
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古来征戦幾人回。  古来 征戦 幾人にか回える

(3)間架法。これは(1)と(2)とを並立させて中間2句を間架となしたもの。
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盧山東南五老峰。  盧山 東南 五老峰
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青天削出金芙蓉。  青天 削り出す 金芙蓉
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九江秀色可攬結。  九江 秀色 攬結すべし
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吾将此地巣雲松。  吾れ将に此の地に雲松を巣なるべし

(4)両折法。前2句を一折とし,後2句を一折とする。
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獨憐幽草澗辺生。     獨り憐れむ幽草の澗辺に生ずるを
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上有黄(麗鳥)深樹鳴。  上に黄(麗鳥)の深樹に鳴く有り
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春潮帯雨晩來急。     春潮 雨を帯びて晩來 急なり
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野渡無人舟自横。     野渡 人なく舟 自ら横わる

(5)間接法。第2句と第3句と相対する。
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越中句践破呉帰。   越中句践 呉を破って帰る
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義士還家尽錦衣。   義士 家に還って尽く錦衣
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宮女如花満春殿。   宮女 花の如く春殿に満つ
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只今惟有鷓鴣飛。   只今惟だ鷓鴣の飛ぶ有り
※鷓鴣(シャコ)は越雉と呼び,小斑鳩に類する,臆前白圓点があり,常に日に向かって飛来し,霜露を畏れて朝夕に出ることは稀であると言う。この詩は栄枯興亡の理を説く。

(6)扇対法。句を隔てて相対する,隔句対。
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去年花下留連飲。   去年 花下 留連の飲
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暖日夭桃鴬乱啼。   暖日 夭桃 鴬 乱啼す
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今日江辺容易別。   今日 江辺 容易の別
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淡煙衰草馬頻嘶。   淡煙 衰草 馬頻りに嘶なく

(7)句中対法。対句は二句相対して成るを常とするが,一句中にも対法が有る。此れを句中対と言う。

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江碧鳥逾白。      江は碧にして鳥 逾よ白く

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萬頃煙波一釣翁。   萬頃の煙波 一釣の翁

(8)四句散対法。四句相対する様で対せず,相対しない様で対する法。
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白白紅紅相間開。   白白 紅紅 相い間に開く
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三三五五踏青來。   三三 五五 青を踏んで來たる
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戯随胡蝶不知遠。   戯れに胡蝶に随い遠くを知らず
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驚見行人笑却廻。   驚き見る行人の笑て却って廻るを

◇⇒平・仄を問わず。○⇒平韻。  ●⇒仄韻。

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題目・梅雨
黄梅時節覚微寒。   黄梅の時節 微寒を覺える
枕上臥披詩巻看。   枕上 臥して詩巻を披き看る
昨日家童新洗竹。   昨日 家童 新に竹を洗う
清陰最可両三竿。   清陰 最も両三の竿なるべし




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