佩文齋詠物詩選 ５
★ 露
秋露 唐 駱賓王
玉 関 寒 気 早 玉関 寒気早く
金 塘 秋 色 帰 金塘 秋色帰る
泛 掌 光 逾 浄 掌を泛べて光逾よ浄く
添 荷 滴 尚 微 荷に添え滴尚を微なり
変 霜 凝 暁 液 霜に変じて暁液を凝らす
承 月 委 圓 輝 月を承て圓輝に委す
別 有 呉 台 上 別に有り 呉台の上
応 湿 楚 臣 衣 応に楚臣の衣を湿すべし
詠露珠 唐 元愼
秋 荷 一 滴 露 秋荷 一滴の露
清 夜 墜 玄 天 清夜 玄天より墜つ
将 來 玉 盤 上 将に玉盤の上より來るべし
不 定 始 知 圓 定まらず 始めて圓なるを知る
秋思 唐 王涯
宮 連 太 液 見 滄 波 宮 太液に連なり 滄波を見る
暑 気 微 消 秋 気 多 暑気 微に消て 秋気多し
一 夜 軽 風 蘋 末 起 一夜 軽風 蘋末より起り
露 珠 翻 尽 満 地 荷 露珠 翻し尽す 満地の荷
上京即事 元 薩都刺
五 更 寒 襲 紫 毛 衫 五更 寒襲う 紫毛の衫
睡 起 東 窓 酒 尚 酣 睡起 東窓 酒尚を酣なり
門 外 日 高 晴 不 得 門外 日高く 晴れ得ず
満 城 湿 露 似 江 南 満城の 湿露 江南に似たり
江上曲 明 劉基
月 出 前 山 青 黛 寒 月出で 前山 青黛寒し
雁 声 遥 下 碧 雲 端 雁声 遥に下る 碧雲の端
草 頭 錯 認 驪 珠 吐 草頭 錯て認む 驪珠の吐くを
自 是 西 風 白 露 團 自ら是れ 西風 白露の團
★ 霜類
城内花園値春霜 唐 劉禹錫
楼 下 芳 園 最 占 春 楼下の 芳園 最も春を占む
年 年 結 伴 采 花 頻 年年 伴を結び 花を采ること頻なり
繁 霜 一 夜 相 撩 治 繁霜 一夜 相撩治め
不 似 佳 人 似 老 人 佳人に似ず 老人に似たり
霜曉 宋 楊萬里
荒 荒 痩 日 作 秋 暉 荒荒 痩日 秋暉を作す
稍 稍 微 暄 破 曉 霏 稍稍 微暄 曉霏を破る
只 有 江 楓 偏 得 意 只だ江楓の 偏に意を得たる有り
夜 随 霜 水 染 紅 衣 夜 霜水を随て 紅衣を染む
明安駅道中 元 陳孚
野 鶴 山 頭 野 草 黄 野鶴山頭 野草 黄なり
野 狐 嶺 上 月 茫 茫 野狐嶺上 月茫茫
五 更 但 覺 天 風 冷 五更 但だ覺ゆ 天風の冷なるを
帳 頂 青 鍛 一 寸 霜 帳頂の 青鍛 一寸の霜
泊長蕩 明 朱多炳
葦 葭 一 望 暮 蒼 蒼 葦葭 一望 暮に蒼蒼
長 蕩 湖 頭 煙 水 長 長蕩湖頭 煙水長し
怪 道 今 朝 楓 葉 尽 怪道す 今朝 楓葉の尽るを
夜 來 七 十 二 橋 霜 夜來 七十二橋の霜
★ 雪類
望雪 梁 丘遅
氛 氤 発 紫 漢 氛氤 紫漢を発す
雑 沓 被 朱 城 雑沓 朱城に被る
條 忽 銀 台 構 條忽 銀台構へ
俄 頃 玉 樹 生 俄頃 玉樹生ず
綿 綿 九 軌 合 綿綿 九軌合し
昭 昭 四 区 明 昭昭 四区明なり
竹下残雪 唐 丘為
一 點 消 未 尽 一點 消じ未だ尽きず
孤 明 在 竹 林 孤明 竹林に在り
晴 光 夜 転 輝 晴光 夜転た輝き
寒 気 曉 仍 深 寒気 曉仍ち深く
還 対 読 書 窓 還た 読書の窓に対す
且 関 乗 興 心 且つ 乗興心に関る
已 能 依 此 地 已に能く 此の地に依る
終 不 傍 瑶 琴 終に 瑶琴に傍らず
和欲雪 宋 梅尭臣
雪 欲 漫 天 落 雪 天に漫ち 落んと欲す
雲 初 著 地 垂 雲 初て地に著て垂る
臂 鷹 過 野 健 鷹を臂にして野を過て健に
走 馬 上 冰 遅 馬を走らせ冰に上こと遅し
公 子 多 論 酒 公子 多く酒を論ず
騒 人 自 詠 詩 騒人 自ら詩を詠ず
都 無 少 年 意 都く 少年の意無く
只 臥 竹 窓 宜 只だ 竹窓に臥して宜し
春雪 唐 李建勲
南 国 春 寒 朔 気 回 南国 春寒 朔気回る
霏 霏 還 阻 百 花 開 霏霏 還た 百花の開を阻む
全 移 暖 律 何 方 去 全て暖律を移して 何の方にか去る
似 誤 新 鴬 昨 日 來 新鴬に誤るに似て 昨日來る
平 野 旋 消 難 蔽 草 平野 旋消して 草を蔽い難く
遠 林 高 綴 却 遮 梅 遠林 高く綴て 却って梅を遮る
不 知 金 勒 誰 家 子 知ず金勒 誰が家の子ぞ
只 待 清 明 賞 帝 台 只だ 清明を待って帝台を賞す
春雪 唐 劉禹錫
三 月 雪 連 夜 三月 雪連夜
未 応 傷 物 華 未だ応に物華を傷まざるべし
只 縁 春 欲 尽 只だ春の尽んと欲るに縁る
留 著 伴 梨 花 留著して梨花を伴う
人日出游湖上 宋 楊萬里
城 中 雪 一 尺 城中 雪一尺
山 中 雪 一 丈 山中 雪一丈
地 上 都 已 消 地上 都て已に消ず
却 在 松 梢 上 却って松梢の上に在り
休暇日王訪王侍御不遭 唐 韋応物
九 日 駆 馳 一 日 間 九日 駆馳して 一日間なり
尋 君 不 遭 又 空 還 君を尋ねて遭わず 又空く還る
怪 來 詩 思 清 人 骨 怪來 詩思の人骨を清するを
門 対 寒 流 雪 満 山 門は寒流に対し 雪は山に満つ
西帰 唐 元愼
寒 花 帯 雪 満 山 腰 寒花 雪を帯て 山腰に満つ
著 柳 氷 珠 曳 碧 條 柳に著く 氷珠 碧條を曳く
天 色 漸 明 回 一 望 天色 漸く明て 一望を回せば
玉 塵 随 馬 渡 藍 橋 玉塵 馬に随い 藍橋をる
早春雪中 唐 戎昱
陰 雲 萬 里 晝 漫 漫 陰雲 萬里 晝 漫漫
愁 坐 関 心 事 幾 般 愁坐 心に関す 事幾般ぞ
為 報 春 風 休 下 雪 為に報ず春風 雪を下すことを休めよ
柳 條 初 放 不 禁 寒 柳條 初て放ち 寒に禁へず
春近 宋 黄庭堅
亭 台 経 雨 壓 塵 沙 亭台 雨を経て 塵沙を壓す
春 近 登 臨 意 気 加 春近うして 登臨 意気加わる
更 喜 軽 寒 勒 成 雪 更に喜ぶ 軽寒 勒して雪を成す
未 春 先 放 一 城 花 未だ春ならず 先ず放つ 一城の花
雪意 宋 朱子
向 晩 浮 雲 四 面 平 晩に向かう 浮雲
四面平かなり
北 風 号 怒 達 天 明 北風 号怒して 天明に達す
寒 窓 一 夜 清 無 睡 寒窓 一夜 清くして 睡こと無く
擬 聴 杉 篁 葉 上 声 杉篁葉上の声を聴ことを擬す
雪 金 呂中孚
随 風 払 払 玉 花 飄 風に随い 払払 玉花飄る
入 夜 寒 窓 更 寂 寥 夜に入て 寒窓 更に寂寥
炉 火 已 残 燈 未 燼 炉火 已に残して 燈未だ燼ず
一 簾 疎 竹 白 蕭 蕭 一簾の疎竹 白蕭蕭
清明大雪三日 元 方回
半 月 雕 梁 燕 子 帰 半月 雕梁 燕子帰る
怯 寒 著 尽 旧 綿 衣 寒を怯え 著尽す 旧綿衣
何 人 酔 眼 西 湖 路 何人か酔眼 西湖の路
錯 認 楊 花 作 雪 飛 錯りて認む楊花 雪と作りて飛ぶを
雪中訪嘉則於宝奎寺之楼店 明 除渭
山 径 尋 君 重 復 重 山径 君を尋ね 重復た重
小 楼 百 尺 臥 元 龍 小楼 百尺 元龍に臥す
安 窓 偏 向 梅 花 角 窓を安じて 偏に向う梅花の角
去 映 江 天 雪 数 峰 去て映ず 江天の 雪数峰
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