佩文齋詠物詩選 ６
★ 氷 類
豪家夏氷詠 唐 雍裕之
金 錯 銀 盤 貯 賜 氷 金錯 銀盤 賜氷を貯す
清 光 如 聳 玉 山 稜 清光 玉山稜を聳かすが如く
無 論 塵 客 閑 停 扇 塵客 閑に扇を停るに論無く
直 到 消 時 不 見 蝿 直に消時に到りて蝿を見ず
★ 虹霓類
詠虹 唐 蘇味道
紆 余 帯 星 渚 紆余 星渚を帯びる
窈 窕 架 天 潯 窈窕 天潯に架る
空 因 壮 士 見 空く 壮士に因って見え
還 共 美 人 沈 還た 美人と共に沈む
遠 勢 含 良 玉 遠勢 良玉を含む
神 光 藻 瑞 金 神光 瑞金を藻す
独 留 長 劍 影 独り留む 長劍の影
寧 負 昔 時 心 寧んぞ 昔時の心負んや
賦得浦外虹 唐 陳潤
日 影 化 為 虹 日影 化して虹と為す
弯 弯 出 浦 東 弯弯 浦東に出で
一 條 微 雨 後 一條 微雨の後
五 色 片 雲 中 五色 片雲の中
輪 勢 随 天 転 輪勢 天に随い転じ
橋 形 跨 海 通 橋形 海を跨て通ず
還 将 飲 水 處 還た将に水を飲む處なるべし
持 送 使 車 雄 持して送る 使車の雄
★ 晴類
晴 唐 杜甫
久 雨 巫 山 暗 久雨 巫山暗し
新 晴 錦 繍 文 新晴 錦繍の文
碧 知 湖 外 草 碧は知る 湖外の草
紅 見 海 東 雲 紅は見る 海東の雲
竟 日 鴬 相 和 竟日 鴬相和し
摩 霄 鶴 数 群 霄を摩す 鶴数群
野 花 乾 更 落 野花 乾きて更に落ち
風 処 急 紛 紛 風処 急に紛紛
雪晴晩望 唐 賈島
倚 杖 望 晴 雪 杖に倚り 晴雪を望む
谿 雲 幾 萬 重 谿雲 幾萬重
樵 人 帰 白 屋 樵人 白屋に帰る
寒 日 下 危 峰 寒日 危峰を下る
野 花 焼 岡 草 野花 岡草を焼く
断 煙 生 石 松 断煙 石松に生ず
却 廻 山 寺 路 却って廻る 山寺の路
聞 打 暮 天 鐘 暮天の鐘を打つを聞く
春晴 唐 任翻
楚 国 多 春 雨 楚国 春雨多し
柴 門 喜 晩 晴 柴門 晩晴を喜ぶ
幽 人 臨 水 坐 幽人 水に臨んで坐す
好 鳥 隔 花 鳴 好鳥 花を隔てて鳴く
野 色 連 空 闊 野色 空に連り闊く
江 流 接 海 平 江流 海に接して平なり
門 前 向 谿 路 門前 向 谿に向かう路
今 夜 月 分 明 今夜 月 分明なり
春晴 宋 韓奇
霄 色 破 春 昏 霄色 春昏を破る
高 楼 日 未 熏 高楼 日未だ熏し
林 梢 零 旧 雨 林梢 旧雨を零し
山 頂 入 残 雲 山頂 残雲に入る
酔 紛 匂 花 頬 酔紛 花頬を匂わし
風 羅 皺 水 紋 風羅 水紋を皺す
踏 青 人 誤 約 踏青 人 約を誤る
芳 思 幾 紛 紛 芳思 幾たびか紛紛
長安晴望 唐 杜牧
翠 屏 山 対 鳳 城 開 翠屏山は 鳳城に対して開く
碧 落 揺 光 霽 後 来 碧落 光を揺し 霽後に来る
回 識 六 龍 巡 幸 処 回て識る 六龍 巡幸の処
飛 煙 閨@繞 望 春 臺 飛煙 閧ﾉ繞る 望春臺
晴 金 趙秉文
東 風 時 送 瓦 溝 声 東風 時に送る 瓦溝の声
敲 枕 幽 窓 夢 自 驚 枕を敲て幽窓 夢自ら驚く
睡 起 不 知 雲 已 散 睡起 知らず雲已に散するを
夕 陽 偏 向 柳 梢 明 夕陽 偏に柳梢に向って明なり
七月八日晩晴暫出厳正門外 元 宋絅
團 團 碧 樹 壓 宮 城 團團たる 碧樹 宮城を壓す
白 鳳 門 檐 淡 日 明 白鳳の門檐 淡日明なり
回 首 瓊 華 仙 島 上 首を回す 瓊華仙島の上
片 雲 猶 欲 妬 新 晴 片雲 猶ほ新晴を妬かんと欲す
晩晴 明 韓奕
水 国 秋 來 少 見 晴 水国 秋來 晴を見ること少し
夕 陽 忽 映 小 窓 明 夕陽 忽ち小窓映じて明なり
西 風 颯 颯 林 間 葉 西風 颯颯 林間の葉
乍 聴 猶 疑 是 雨 声 乍ち聴て猶ほ疑う 是れ雨声かと
早帰 唐 元愼
春 静 暁 風 微 春静して 暁風微なり
凌 晨 帯 酒 帰 晨を凌ぎ 酒を帯て帰る
遠 山 篭 宿 霧 遠山 宿霧を篭める
高 樹 影 朝 暉 高樹 朝暉に影す
飲 馬 魚 驚 水 馬に飲すれば 魚 水に驚く
穿 花 露 滴 衣 花に穿つれば 露 衣に滴る
嬌 鴬 似 相 悩 嬌鴬 相い悩むに似たる
含 囀 傍 人 飛 囀を含で 人に傍て飛ぶ
★ 夜 類
春宵自遣 唐 李商隠
地 勝 遺 塵 事 地 勝りて 塵事を遺し
身 閨@念 歳 華 身 閧ﾉして 歳華を念う
晩 晴 風 過 竹 晩晴 風 竹に過ぎ
深 夜 月 当 花 深夜 月 花に当る
石 乱 知 泉 咽 石乱れて 泉咽ぶを知る
苔 荒 任 径 斜 苔荒て 径の斜なるに任す
陶 然 恃 琴 酒 陶然 琴酒を恃む
忘 却 在 山 家 忘却す山家に在るを
江村晩景 元 葉顆
野 水 谿 橋 外 野水 谿橋の外
荒 邨 八 九 家 荒邨 八九家
雨 晴 漁 網 晒 雨晴て 漁網晒し
風 定 酒 旗 斜 風定て 酒旗斜なり
江 樹 霜 江 葉 江樹 霜江の葉
黄 蘆 月 岸 花 黄蘆 月岸の花
何 當 従 此 隠 何か當に 此に従て隠れ
重 整 釣 雲 槎 重て釣雲の槎を整うべし
嘉陵夜有懐 唐 白居易
露 湿 墻 花 春 意 深 露 墻花を湿し 春意深し
西 廊 月 上 半 牀 陰 西廊 月は上る 半牀の陰
憐 君 独 臥 無 言 語 憐む君が 独臥 言語無きを
惟 我 知 君 此 夜 心 惟だ我れ知る 君が此夜の心
夜行 宋 晁冲之
老 去 功 名 意 転 疎 老去て 功名 意転た疎なり
独 騎 痩 馬 問 田 盧 独り痩馬に騎て 田盧を問う
孤 邨 到 暁 猶 燈 火 孤邨 暁に到り 猶を燈火
知 有 人 家 夜 読 書 知る人家 夜 書を読む有ることを
旅夜 元 于石
擁 炉 兀 兀 坐 成 睡 炉を擁し 兀兀 坐して睡を成す
夢 到 家 山 人 不 知 夢 家山に到て 人知らず
半 夜 酒 醒 還 是 客 半夜 酒醒て 還た是れ客
一 庭 黄 葉 雨 来 時 一庭の黄葉 雨 来る時
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