★ 潘 岳 ★(1247~300 )

字は安仁.開封(中牟)の出身,潘岳と陸機は常に比較され話題となる.徹底した現実主義で現実的利益の為には同義的避難は省みない,文学においても徹底した技巧主義であり,陸機は偉丈夫なのに対し潘岳は非常な美男子で外出すると,若い女たちが手を繋ぎ通ることを遮り,果物を投げつけて車いっぱいになったと言う.常に陸機と併称して『潘陸』と呼ばれる.南方出身の陸機に対し,北方文人の潘岳は自我中心的で個性的な感情と悲哀の感情を表す作品に優れる

『詩品』の著者,梁の鐘嶸(469~518)は「潘陸」の優劣を評し,「陸機の才は海のようであり,潘岳の才は長江のようである,陸機は才能のはばは広いが,詩に動きがなく,潘岳は才能のはばはせまいが,詩はダイナミックな詩情を持つ」と述べている.
             金谷集作詩     金谷集作詩
       王生和鼎実。   王生は鼎実を和え
       石子鎮海沂。   石子は鎮海沂を鎮めんとす
       親友各言邁。   親友 各々に言う 邁けば
       中心悵有違。   中心 悵として違う有り
       何似叙離思。   何を似てか離思を叙べん 
       携手遊郊畿。   手を携えて に遊ばん郊畿
       朝発晋京陽。   朝に晋京の陽を発し
       夕次金谷湄。   夕に次金谷の湄に次る
       廻渓縈曲阻。   渓を廻りて曲れる阻を

       嶮阪路威夷。   嶮しき阪 路は威夷し
       緑池汎淡淡。   緑の池は汎れて淡淡たり   
       青柳何依依。   青き柳は何ぞ依依たる
       濫泉龍鱗瀾。   濫泉 龍鱗の瀾
       激波連珠揮。   激波 連珠の揮 
       前庭樹沙棠。   前庭 沙棠を樹え
       後園植鳥稗。   後園 鳥稗を植える
       霊囿繁若榴。   霊囿 若榴繁げる
       茂林列芳梨。   茂林 芳梨の列なり
       飲至臨華沼。   飲至り 華沼に臨む
       遷坐登隆坻。   坐を遷し 隆坻に登る
       玄醴染朱顔。   玄き醴 朱顔を染める



             
悼亡詩

       
荏苒冬春謝   荏苒として冬春謝し
       寒暑忽流易   寒暑 忽ち流易す
       之子帰窮泉   之の子 窮泉に帰し
       重壤永幽隔   重壤は永く幽隔す
       私懐誰克従   私懐に誰か克く従はん
       淹留亦何益   淹留するも亦何の益あらん
       僶俛恭朝命   僶俛として朝命を恭しみ
       入室想所歴   入室に入って歴し所を想う
       望盧思其人   盧を望みて其の人を思う
       幃屏無髣髴   幃屏に髣髴たる無く
       翰墨有余跡   翰墨に余跡あり
       流芳未及歇   流芳 未だ歇むに及ばず
       遺挂猶在壁   遺挂は猶を壁に在り
       悵怳如或存   悵怳として或は存するが如く
       周遑忡驚惕   周遑として忡へ驚惕す
       如彼翰林鳥   彼の林に翰うつ鳥の
       雙棲一朝隻   雙棲するの一朝にして隻なるが如し 
       如彼遊川魚   彼の遊川に遊ぐ魚の
       比目中路析   目を比べしもの中路に析たるが如し
       春風縁隙来   春風 隙に縁りて来たり
       晨溜承簷滴   晨溜 簷を承けて滴る
       寝興何時忘   寝興 何れの時か忘れん
       沈憂日盈積   沈憂は日に盈積す
       庶幾有時衰   庶幾はくは時に衰える有らんことを
       荘缶猶可
撃   荘缶をば猶を撃つ可し

詩語:荏苒:月日の過ぎ行く形容
    謝:過ぎる
    窮泉:遠い黄泉の国
    私懐:私情:妻の死に際して悲しみの為に仕官を辞め様とする気持ち
    望盧:妻を帰葬して再び任地に来て,我が家を望む
    髣髴:相似てる形容.
    流芳:衣類に薫じた香気のただようこと
    遺挂:衣類や装飾品などが壁に掛けられたもの
    悵怳:自失すること
    周遑:慌て うろたえる形容
    比目:必ず二匹目を並べて行く魚
    晨溜:雨,水の流下する意
    寝興:寝ても醒めても
    沈憂:心の奥底からの憂い
    荘缶:荘子は妻の死に際して盆を鼓して歌った言う.荘子は生死は一であり,哀楽も一つと悟り,生死を超越した私想から妻の死をも哭さなかったとの意

     於賈謐坐講漢書 (賈謐の坐に於て漢書を講す)

    
理道在儒  道を理むるは 儒二在り
    弘儒由人  儒を弘むるは 人に由る
    光矣魯侯  光かしき 魯侯
    文質彬彬  文質は 彬彬たり
    筆下?藻   筆下に 藻を?べ
    席上敷珍  席上に珍を敷く
    前疑惟辨  前疑を 惟れ辨じ
    旧史惟新  旧史を 惟れ新にす
    将分爾疑  将に 爾の疑いを分かたんとし
    既辨爾疑  既に 爾の疑いを辨す
    延我僚友  我が僚友を延き
    講此微辞  講此の微辞を講ず



6/12/2007   石 九鼎