新秋即事

一片雁書多所思。     一片の雁書 所思 多し
故人筆硯両心知。     故人の筆硯 両心 知る
想看千里郷山晩。     想い看る 千里 郷山の晩

隠隠暮鐘満古池。     隠隠たる暮鐘 古池に満つ

 【語意】新秋即事
  ○ 雁書: 手紙。便り。匈奴に捕らわれた漢の蘇武が雁の足に
         手紙をつけて天子に通知した故事の基ずく。
  ○ 故人: 友人。友達。

        中秋観月

一天気感幽深。    一天の気 幽深を感ず
邀月飛觴発酔吟。    月を邀へ 觴を飛ばし 酔吟を発す
三五夜中風露冷。    三五 夜中 風露 冷ややかなり
桂花馥盪詩心。    桂花 馥して 詩心を盪す

   【語意】 中秋観月
     ○ 気: 天上の白く明るい気。秋の気。
     ○ 觴(しょう): さかずき。
     ○ 三五:十五夜
     ○ 盪(とう): うごかす。あらう。


            秋夜読『漢 書』戯一賦

露滴庭梧夜気清     露滴 庭梧 夜気 清し
吟蛩繞屋早涼生     吟蛩 屋を繞り 早涼 生ず
却憐皎皎漢時月     却つて憐れむ 皎皎 漢時の月
又照空閨秋扇情     又照らす 空閨 秋扇の情

   【語意】 秋夜『漢書』を読み戯れに一賦
     ○ 吟蛩: しきりに鳴くこうろぎ。
     ○ 空閨: 誰もいない婦人のねや。
     ○ 秋扇: 秋の扇、転じて、不要となったのも。愛されなくなった女の例え。



   Copyright (C) 2001-2004    石九鼎の漢詩館
   
 http://www.ccv.ne.jp/tohou/is_36.htm
    このページへのリンクはj自由です。無断コピーは禁止します