清十家絶句集　（９）　　　樊（木＋射）山房全集（はんしゃざんぼう） 　　　　　　　　　　　　�殊L絶句詩集 �殊L（れいがく）（1692〜1752）。字は太鴻。号は樊（木＋射）はんしゃ。淅江省銭塘県の人。�殊Lの家は極貧な状態であった。然し、当時は優れた詩人や学者を保護する篤志家の民間人が各地に現われていた時代であった。俗に言うパトロンである。�殊Lの場合は、河北省天津の査為仁。江蘇省揚州の馬曰（王＋官）。杭州の呉（火＋卓）ごしゃく。等、詩人でもあり学者、富豪で蔵書家である人々に奇寓しながら研鑚した。日本でも明治時代、大倉財閥が漢詩人を援助した例で説明できる。 　沈徳潜が『宋の習いに沿い唐の風を敗ける者は、樊（木＋射）より�氏iわざわい）のもととなす。』と、誹ったのを、袁枚が惹きとって反論したと言う。　梁川星巌は�殊Lの樊（木＋射）山房全集を秘本とした 　　秋夜宿葛嶺涵青精舎二首（一） 笑看圓月上前峰。　　　笑て看る圓月　前峰に上るを 塔影微瀾臥玉龍。　　　塔影　微瀾　玉龍に臥す 林際窺人太無夢。　　　林際に人を窺がい太だ夢　無く 好風吹送隔湖鐘。　　　好風　吹き送る湖を隔てる鐘 　　秋夜宿葛嶺涵青精舎二首（二） 書燈佛火影清涼。　　　書燈　佛火　影　清涼 夜上層楼看海光。　　　夜る層楼に上り海光を看る 蕉風暗廊蟲弔月。　　　蕉風　暗廊　蟲　月を弔う 無人知是半�闢ｰ。　　　人　無く　知る是れ　半�闢ｰ 　　蝋梅 �於ｩ宮黄鬢朶鮮。　　　�奄ﾍ宮黄を掠て鬢朶　鮮なり 斜門疎竹暎便娟。　　　斜門　疎竹　便娟を暎す 年年分餉銅街處。　　　年年　餉を分る銅街の處 正是城南小雪天。　　　正に是れ城南　小雪の天 　　冬日雑詩二首（一） 水辺僧屋刹竿雙。　　　水辺の僧屋　刹竿雙 飢鳥窺人上石幢。　　　飢鳥　人を窺がい石幢に上る 解向西風吟落葉。　　　西風に向い落葉を吟じるを解す 黄金合鋳賈長江　　　　黄金の合鋳　賈長江 　　人日遊南湖慧雲寺七首（一） 南湖春水緑温暾。　　　南湖の春水　緑温の暾 老柳生稗竹有孫。　　　老柳　生稗　竹は孫あり 頭白僧閑能引路。　　　頭白の僧は閑に能く路を引く 斜陽挂處指三門。　　　斜陽　挂げる處　三門を指す 　　人日遊南湖慧雲寺七首（二） 朱崖南去鳥呼風。　　　朱崖　南のかた去れば鳥　風を呼ぶ 草木平泉笑衛公。　　　草木　平泉　衛公を笑う 何似試香城北野。　　　何ぞ似たる香を試みる城北の野 残僧礼拝冷烟中。　　　残僧　礼拝す　冷烟の中 　　人日遊南湖慧雲寺七首（三） 登高何處可忘帰。　　　登高　何れの處ぞ帰を忘れるべく 古寺梅風動客衣。　　　古寺の梅風　客衣を動かす 漸有放生團社約。　　　漸く放生　團社の約あり 魚苗如蟻水初肥。　　　魚苗　蟻の如く水　初めて肥える 　　沙河 澄明日影射魚罩。　　　澄明　日影　魚罩を射す 淡冶風光上鴨陂。　　　淡冶たる風光　鴨陂に上る 斉浸籬根三尺水。　　　斉しく籬根を浸す三尺の水 小桃正是試花時。　　　小桃　正に是れ花時を試みる 　　西渓月夜懐大滌山二首（一） 天柱峰頭見晴雪。　　　天柱の峰頭　晴雪を見る 揺壇玉洞暗相連。　　　揺壇の玉洞　暗に相い連なる 石林夙具看山癖。　　　石林　夙に具う看山の癖 也負知宮三十年。　　　也た負く知宮　三十年 　　西渓月夜懐大滌山二首（二） 雲根際夕抱冬心。　　　雲根　夕に際し冬心を抱く 渓曲沿縁不可尋。　　　渓曲　縁に沿て尋ぬるべからず 遙想郭文棲隠處。　　　遙に想う郭文　棲隠の處 夜泉孤月萬松深。　　　夜泉　孤月　萬松　深し 　　題水居逃暑図 峭壁挿天下無地。　　　峭壁　天を挿み下に地なく 萬荷喧雨境蕭然。　　　萬荷　喧雨　境　蕭然 適來披畫當秋爽。　　　適來　畫を披けば當に秋爽なるべし 尚想風亭散髪眠。　　　尚ほ想う風亭　髪を散じて眠るを 　　題対山開巻楼壁 僧楼恰対恵峰開。　　　僧楼　恰も恵峰に対して開く 寒玉冷冷歩履回。　　　寒玉　冷冷　履を歩して回る 侍與山霊話畴昔。　　　山霊に侍與して畴昔を話す 杜鵑紅處我曽來。　　　杜鵑　紅き處　我れ曽て來る 　　同程友声紅橋夜汎 月黒水深荷葉路。　　　月黒く水深し　荷葉の路 涼蛍無数繞船飛。　　　涼蛍　無数　船を繞って飛ぶ 與君今夜紅橋酒。　　　君と今夜　紅橋の酒 不負揚州白苧衣。　　　揚州　白苧衣に負けず 　　題陳楞山秋林読書図 橋隠廻渓樹隠櫺。　　　橋隠　渓を廻り　樹隠は櫺 人間有此小林経。　　　人間　此の小林の経に有り 西風日日翻書葉。　　　西風　日日　書葉を翻す 吹得数峰如許青。　　　数峰に吹き得て許くの如く青なり 　　四月十日湖上作 愛來湖上作浮家。　　　湖上に愛し來たり浮家と作す 艇子衝波一道斜。　　　艇子　波を衝き　一道斜なり 日晩水仙祠下去。　　　日晩れ水仙　祠下に去り 青山影裏采蘋花。　　　青山　影裏　蘋花を采る 　　山陰舟中四首（一） 寒雨欺晴暁未歇。　　　寒雨　晴を欺き　暁未まだ歇まず 故添湿翆到船窗。　　　故に湿翆を添え　船窗に到る 西風併作銷魂思。　　　西風　併せて銷魂の思と作す 新雁一声飛渡江。　　　新雁　一声　飛んで江を渡る 　　山陰舟中四首（二） 白塔湖邊孤櫂開。　　　白塔湖邊　孤櫂を開く 風回忽巻乱雲堆。　　　風は回り忽ち乱雲を巻いて堆く 越山絶似西施髻。　　　越山　絶て似たり西施の髻に 朶朶翆翹浮水來。　　　朶朶たる翆翹　水に浮いて來る 　　寶應舟中月夜 蘆根渺渺望無涯。　　　蘆根　渺渺　望み涯なし 雁落圓沙幾点排。　　　雁落　圓沙　幾点か排す 明月堕烟霜著水。　　　明月　烟に堕ち　霜　水に著ける 行人今夜宿清淮。　　　行人　今夜　清淮に宿す 　　蒙陰 衝風苦愛帽簷斜。　　　衝風　苦ごろに帽簷の斜を愛す 歴尾無多感歳華。　　　歴尾　多く無し　歳華を感ずる 却向東蒙看霽雪。　　　却って東蒙に向かい　霽雪を看る 青天乱挿玉蓮花。　　　青天　乱て挿す　玉蓮花 　　西湖竹枝詞三首（一） 楊柳作花湖水香。　　　楊柳　花と作し　湖水　香ばし 湖上楼高不見郎。　　　湖上楼高くして　郎を見ず 西山悩殺冷泉冷。　　　西山　悩殺す　冷泉　冷かなり 南山愛殺長橋長。　　　南山　愛殺す　長橋の長きを 　　蝋月二十四日探梅孤山題壁 屈曲紅欄繞幾巡。　　　屈曲　紅欄　幾巡を繞る 冷雲先作一分春。　　　冷雲　先づ作す一分の春 梅花半樹倒臨水。　　　梅花　半樹　倒しまに水に臨む 便與逋仙写小身。　　　便ち逋仙と小身を写す 　　雨後写望 風敲病葉入疎櫺。　　　風　病葉を敲き　疎櫺に入る 雲破寒山数筆青。　　　雲　寒山を破り　数筆　青し 十日鼓琴晴初出。　　　十日　琴を鼓き　晴れ初て出る 夕陽依旧満廻汀。　　　夕陽　旧に依って廻汀に満つる 　　巌朗屋写小像為杜子春事索題四首（一） 長安遊戯倦風埃。　　　長安の遊戯　風埃に倦む 論到銭愚劇可哀　　　　銭愚を論じ到れば劇はだ哀むべし 脱手紫標三百萬。　　　手づから紫標を脱す三百萬 杜郎侠骨本仙才。　　　杜郎の侠骨　本と仙才 　[目次] 　　　　　　　　　Copyright (C) 2001-2003　　　　石九鼎の漢詩館 　　　　　　　　http://www.ccv.ne.jp/home/tohou/jiadao15.htm 　　　　　　　　このページへのリンクはj自由です。無断コピーは禁止します