緑陰読書 辛卯五月例会席上分韻。 得微
衣波山麓不開扉。 衣波山麓 扉を開かず
吃舌残鶯序啼稀。 吃舌たる残鶯 序啼 稀なり
寂寂緑陰春欲暮。 寂寂たる緑陰 春 暮なんと欲す
獨倚書案読韓非。 獨り書案に倚りて韓非を読む
(詩語)
●衣波=江波(地名)広島市江波町。明治時代(料亭:山分の名で有名な場所。。文化文政時代梁川星巌が安芸国,
広島の頼山陽を尋ね,料亭:山分で一献を傾け談笑した旧記事有り)我が草堂付近。
●吃舌=どもる。さま。
●音律で,序。破。急。の三字有り。序は緩やか。物事の始め。破は幾分か音律の順序。
●急=音律の激しい,勢いの有るさま,を言う。
●書案=机の類。
●韓非=韓非子。(紀元前280年頃? - 紀元前233年)
●韓非は「韓の公子の一人である。刑名法術の学を好み,其れを,黄帝・老子の思想家によって理論づけた。韓非は生まれつき,どもり ,で弁論は得意ではなかったが,著述は得意だった。
李斯も韓非には,かなわない,と思っていた。
秦の始皇帝が韓非の著作を読んで感心した,と言う話は有名である。秦の滅びた理由の一つに韓非 秦の始皇帝以来の暴君だ と,暴君の代表賭さした。「韓非とその書韓非子五五篇,が有る。
●韓非は韓の国が他の国によって,其の国土を削られ,弱体化させられのを看て,屡々書簡を送り韓王を 諫めたが,韓王は其の意 見を用いることをしなかった。韓非は,国を治めるのに,その法制を修明してその勢位によって臣下を制御し,国を富まし兵を強くし て,人材を求めて賢人を用いることを務めず逆に浮薄淫佚の無能者を登用して実力功労者の上におくのを憎み『儒者は文をもっ て法を乱し,侠者 は武をもって禁を犯す。』
▲儒家と墨家は同じ穴のむじな。人間は利益を追求する動物であるとの仮説から,賞罰によって人間を法による国を治める統治術を 完成し秦の統一の基礎を築いた。
▲強国と弱国,とは其れを作った人間の本性は孟子の様に「性善」 なのか,荀子の様に「性惡であるが礼には素直に従う」なのか。 韓非の論議は総べて此処から出発し,此処へ戻って来る。
▲縦割り行政の弊害が云々されるが,他人の領分までに口を出す。うまくゆけば自分の手柄。失敗いたら 知らぬ存ぜぬ。職務分担
と越権行為。此が官僚制の大切なところ。完全な君主により完全に制度化された官僚制度にあって対処,対応出来ないものは何 も無い,韓非子は述べる。
▲国が変な事になるのは,為政者が問題。国をむしばむ五種の害虫。今の政治屋は「国をむしばむ五種の害虫」も知らない。人民が 選挙で選んだ責任も大きい。「道徳」ばかりを説いてる。殆どの人民は利益の追求を目的に生きている。君(為政者)と(政治屋)臣 は,売り買いの関係だと韓非子は言う。利の爲には何をするか解らない。
石 九鼎 2011-07-12
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