劉　楨

劉　楨
　　　　　　　　贈従弟三首之一

亭亭山上松。　　　　　　亭亭たる山上の松
瑟瑟谷中風。　　　　　　瑟瑟たる谷中の風
風声一何盛。　　　　　　風声　一に何ぞ盛んなる
松枝一何勁。　　　　　　松枝　一に何ぞ勁き
冰霜正凄惨。　　　　　　冰霜は正に凄惨たる
終歳常端正。　　　　　　終歳　常に端正なり
豈不羅凝寒。　　　　　　豈に凝寒に羅らざらん
松柏有本性。　　　　　　松柏　本性有り

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高くそびえる山上の松
ひゅうひゅうと吹き当てる谷間の風
風の声の何と盛んなことか
折れもせず、松の枝のいかに強いことか
冬になり、氷や霜が、すごい寒さで犯しても
松はビクリともせず、年中正しく身を保っている
厳寒の気候に遭遇して、凋むことの無いのは
松柏の本性が然らしめるのである　

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　　　　　　　　　　雑　詩

職事煩填委。　　　　　職事　煩として填委し　
文墨紛消散。　　　　　文墨　紛として消散す
馳翰未暇食。　　　　　翰を馳せて未だ食うに暇あらず
日昃不知晏。　　　　　日　昃いて晏ふを知らず
沈迷簿領書。　　　　　簿領の書に沈迷し
回回自昏乱。　　　　　回回として自ら昏乱す
釋此出西域。　　　　　此を釋てて西域を出で
登高且遊觀。　　　　　高きに登りて且く遊觀す
方塘含白水。　　　　　方塘　白水を含み
中有鳬與雁。　　　　　中に鳬と雁と有り
安得粛粛羽。　　　　　安んぞ粛粛たる羽を得て
従爾浮波瀾。　　　　　爾の波瀾に浮ぶに従はん

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仕事が煩わしくたまり
文書の整理すべきものが、やたらに多い
食事の暇も無く筆を走らせても
日暮れになって休息ができない始末である
心は書類の中に迷いこんでしまって
すっかり昏乱しそうである
此を出て西の郊外に出て高台に登り気晴らしに、あたりを眺めた
見ると、四角な池には水をたたえて白く光り
中にはカモと雁が泳いでいる
できることなら、あのように、羽をつけて
共に波の上を自由に泳ぎまわりたい
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劉楨（170-217）　字は公幹。山東省の人。「建安七子」の一人。父の梁もまた文才があった。曹操に召されて丞相掾属となる。辞旨巧妙で諸公子に親愛された。曽て曹操の宴に招かれて甄夫人に会い、列座みな伏して拝したのに、彼一人平視して伏さなかったので、曹操から不敬の罪で問われたが、重くは責められなかった。楨はその人と為り気骨があり、風格高く、文章も俗を脱した気味があった。建安二十二年卒した。

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