張 華
        情詩二首之一

遊目四野外。      目を四野の外に遊ばせ
逍遥獨延佇。      逍遥として獨り延佇す
蘭恵縁清渠。      蘭恵は縁清渠に縁り
繁華蔭緑渚。      繁華は緑渚を蔭う
佳人不在茲。      佳人は茲に在らず
取此欲誰與。      此を取るも誰にか與へんと欲す
巣居知風寒。      巣居しては風の寒さを知り
穴処識陰雨。      穴処しては陰雨を識る
不曽遠離別。      曽て遠く離別せざれば
安知慕儔侶。      安んぞ儔侶を慕うを知らん

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四方の野辺をあちらこちらと見渡しつつ
一人でぶらぶらしたり、留まり、佇んだりする
蘭や薫の香草は水清らかな溝に沿て生じ
咲き乱れたその花は緑の水ぎわを蓋ている
私の夫は他所に行き、此処には居ない
この花を折り取っても誰にも贈りようが無い
巣の中に棲むものこそは、風が吹いて寒いことを知る
穴の中に居るものこそは、空が曇り雨が降ることを識る
私と夫は遠く離れて、いなければ
如何して夫を恋い慕うことを知り得たであろう、離れてみて始めて解かり得た
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張華(232-300)字は茂先、河北省の人。幼少で孤となり、貧しく、自ら羊を牧した。学業は優れ、且つ博く、辞藻は温麗。魏の初め、太常博士に挙げられ、晉に入っても仕え功績が多い 趙王倫、孫秀の為に害せら、三族の近親までも殺された。卒する日、家には余資なく、ただ文書が箱に溢れるほどあっただけである。彼は賦のみならず、五言詩を善くした。



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