徐 幹
            雑 詩
浮雲何洋洋。      浮雲 何ぞ洋洋たる
願因通我詞。      願はくは因りて我が詞を通ぜん
飄飄不可寄。      飄飄として寄す可からず
徒倚徒相思。      徒倚して徒に相思うのみ
人離皆復会。      人は離るるとも皆な復会うに
君独無返期。      君独り返るの期なし
自君之出矣。      君の出でし自り
明鏡暗不治。      明鏡 暗くして治せず
思君如流水。      君を思うこと流水の如し
有何窮已期。      何ぞ窮已する期有らんや

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空に浮く雲は何とたよりつく所のない様子であろう
せめて、この浮雲たよって私のことばを、彼の人に通じたいものである
しかし雲は風にひるがえり流れて、ことづけることが出来ない
それでも私は立ち去り難くて、無益にも、ただ思いつずけるばかりである
人々は離れてもみな再び会うのに
貴方はだけは何時、帰るのやら当ても無い
貴方が出て行ってからは
澄んだ鏡も涙で曇り、私は化粧も直さない
君を思うことは流れる水のようで
どうして窮まりやむ時があろうか

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徐幹(171〜218)字は偉長。山東省青州府東の人。「建安七子」の一人。聡明博識で、官禄に対しては至って淡泊であった。武帝の軍謀司空祭酒掾属、五官将文学の官であった。

建安二十三年没。年四十八歳。「中論」二十余編等の著がある。『文章は漢の張衡、蔡中郎も過ぐる能はず』(文帝・「論文)と称された。「玄猿」「漏巵」「員扇」「橘賦」等の傑作がある。



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