左　思

左　思
　　　　　　　　　　　　雑　詩
秋風何冽冽。　　　　　　秋風　何ぞ冽冽たる
白露為朝霜。　　　　　　白露　朝の霜と為る
柔條旦夕勁。　　　　　　柔條　旦夕に勁く
緑葉日夜黄。　　　　　　緑葉　日夜に黄ばむ
明月出雲崖。　　　　　　明月　雲崖より出でて
皦皦流素光。　　　　　　皦皦として素光に流る
披軒臨前庭。　　　　　　軒を披きて前庭に臨めば
嗷嗷晨雁翔。　　　　　　嗷嗷として晨雁翔ける
高志局四海。　　　　　　高志　四海に局られ
塊然守空堂。　　　　　　塊然として空堂を守る
壮歯不恒居。　　　　　　壮歯　恒に居らず
歳暮常慨慷。　　　　　　歳暮　常に慨慷する

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秋風は何と冷たいことだろう
白露は朝の霜となる季節である
樹々の柔らかい若枝も、朝夕に剛わく強くなってきた
緑の葉も日夜に黄色になる
明月は雲の端に出て
白々とした光が流れている
長廊の軒下の扉を開いて庭に出てみると
さわがしく鳴きながら、雁が翔け渡って行く
高志を抱きながら、この小さな世界に限られて、充分のばすことが出来ずに
ただ独り人もいない家を守って住んでいるのであるが
若い時は何時までも続くものではなく
晩年に人は常に残念がり慨くものである。無為に日を送らないようにしたいものである。
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左思　（250-305)　字は太冲。山東省の人。若い時、（鍾・胡）の書法や、琴を鼓することを学ぶがどれも成らず、のち父の言に励まされ、発憤して学に勤勉。兼ねて陰陽の術を善くする。容貌は醜く口は重い。然し、博学能文、辞藻は壮麗、交遊を好まず、ただ閑居をこととした。後、斉王の記室となる。遅筆で、「斉都賦」を作るのに一年を要したと伝えられる。「三都賦」は班固・張衡に匹敵する名文で「洛陽の紙価」を高らしめたと称せられる。「詠史詩」「招隠詩」もまた有名である。

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