漢魏六朝詩選  (24)

   江 淹

  効阮公詩十五首之一 
少年学撃剣。   少年 剣を撃つを学び
従師至幽州。   師に従い 幽州に至る
燕趙兵馬地。   燕趙 兵馬の地
惟見古時邱。   惟だ 古時の邱を見る
登城望山水。   城に登り 山水を望む
平原獨悠悠。   平原 獨り悠悠たり
寒暑有往来。   寒暑 往来すること有り
功名安留可。   功名 安んぞ留まる可けん


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少年の頃から私は剣撃を習って
師に従い幽州まで来た
此の地、燕と趙は昔から古来戦場となった處である
ただ古跡の邱が残っているのを見る
城壁に登り山水を眺望すると
平原だけが悠悠と遙に広がり見える
寒暑は往き来きし、時が過ぎゆくのであり
功名はどうして永く保ち留めることが出来ようか
 此処の地の興亡変転の址を留めない山河を見て、英雄の事業も儚いものと感じるのである。

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江淹(444〜505)字は文通。河南省開封の人。若い頃は孤貧、学を好み、司馬相如、梁鴻を慕った。
性質は温厚、文才に秀でて、あらゆる詩体に通じていた。特にその詩は心理を表現することに秀でた
 「恨賦」「別賦」など『文選』に入っている。擬淵明、擬康樂、擬左思、など擬古の作に長じている。
この詩は江淹が少年時、勃勃たる雄志と慷慨を強烈に浮き出した佳作とされる。
                                             06/13/2002