| ★毛沢東詩詞集★ 近代中国詩家絶句選（20） 毛沢東 毛沢東（1893〜1976）湖南省湘潭県の人。1911年の革命の際、18才で革命軍の兵士となる。革命の失敗後、長沙の師範学校に入り、進歩的青年の団体≪新民学会≫を組織し、湖南の五・四運動の中心となった。この運動の中でマルクス主義を選んだ。 1934年10月、毛沢東が中央政治局員の責任者に選ばれ、その指導のもとに25,000華里（約1万km）の紅軍の長征が行われ、陜西省北部に新根拠地がつくられた。37年7月日本との全面戦争になって以後、中共は全力を傾け日本軍と戦い毛沢東は≪持久戦論≫≪新民主主義論≫によって抗日戦争と中国革命の基本コースとの関係を明確にした。 某国が毛沢東を推進し49年10月1日。中華人民共和国を成立させ、毛沢東は初代の中央人民政府主席に選ばれた。蒋介石は台湾に渡る。59年4月国家主席の地位を劉少奇にゆずる、しかし実質的な指導者でもあった。65年から始ったプロレタリア文化革命。71年からの批修整風運動。75年からの批林批孔運動を推進した。 両雄相並び立たず。戦雄の某は詩人の途を選んだ。然も中国文化大革命は未だ”総括”されていない。彼の詩を読んで感じるのは『詩経』を参考にした調子の詩が多い。中国専門家の共通した意見でも有る。 帰国謡 （1919年） 今宵月、 今宵の月 直把天涯都照透、 直に天涯を把り都て照透する 清光不令青山失。 清光 青山をして失なわしめず 清渓却向青灘泄、 清渓 却って青灘に向って泄す 鶏声歇、 鶏声 歇み 馬嘶人語長亭白。 馬嘶き 人語り 長亭は白し 清平樂 六盤山 （1935年） 天高雲淡、 天高く雲淡し 望断南飛雁。 望断す南飛する雁を 不到長城非好漢、 長城に到らずんば好漢に非ず 屈指行程二万。 屈指すれば行程二万 六盤山上高峰、 六盤山上の高峰 紅旗漫巻西風。 紅旗 漫に西風を巻く 今日長桜在手、 今日 長えに桜 手に在り 何時縛住蒼龍、 何時か縛って蒼龍を住せん 蒼龍⇒東宮蒼帝・其の精は龍と為す。を謂う。≪後漢書・張純伝≫此では日本帝国主義を指す 六言詩（1） （1935年10月） 山高路遠坑深、 山高く路遠し坑は深く 大軍従横駆奔。 大軍は従横 駆奔する 誰敢横刀立馬？ 誰か敢えて刀を横たえ馬に立たん？ 惟我彭大将軍！ 惟だ我が彭大将軍！ 坑深⇒高度高原地区 彭大将軍⇒彭徳懐（1898〜1974）湖南省の人、文革期間迫害に遭い1974/11/29逝去。 浣 渓 沙。 和柳亜子先生 （1950/10） 長夜難明赤県天、 長夜 明け難し赤県の天 百年魔怪舞翩施、 百年の魔怪 翩施に舞う 人民五億不団圓。 人民五億 団圓ならず 一唱雄鶏天下白、 一唱す雄鶏 天下は白し 萬方樂奏有于填、 萬方 樂奏 于填あり 詩人興会更無前。 詩人の興会 更に前に無し 赤県⇒中国を謂う≪史記・孟子荀卿列伝≫中国の名曰く赤県神州。 一唱雄鶏天下白⇒李賀≪致酒行≫ 于填⇒漢代西域国名。今、新疆ウイグル地区。 七絶二首（1） 莫于山 翻身復進七人房。 身を翻がえし復た進む七人房 回首峰巒入莽蒼。 回首すれば峰巒 莽蒼に入る 四十八盤才走過。 四十八盤 才に走り過ぐ 風駆又已到銭堤。 風駆り又た已に銭堤に到る 七人房⇒作者が使用する臥車。七人が坐すことができる。 峰巒⇒莫于山を指す。 銭堤⇒県名。杭州市を指す。 七絶二首(２） 五雲山 五雲山上五雲飛。 五雲山上 五雲飛ぶ 遠接群峰近拂堤。 遠く群峰に接し 近くは堤を拂う 若問杭州何処好。 若し杭州の何れの処が好きを問わば 此中聴得晩鶯啼。 此中 聴き得たる晩鶯の啼 五雲山⇒杭州西湖群山の一つ。 觀 潮 （1957/9/11） 千里波涛滾滾來。 千里の波涛 滾滾として來る 雪花飛向釣魚臺。 雪花 飛んで釣魚臺に向う 人山紛贊陣容闊。 人山 紛贊す陣容の闊を 鉄馬従容殺敵回。 鉄馬 従容 敵を殺して回る 釣魚臺⇒釣臺。銭塘江中段の富春江濱にあり、子陵が隠居し垂釣の処。 人山⇒人山人海。人の山、黒山の人だかり。 鉄馬⇒陸遊≪十一月四日風雨大作≫ ”夜爛臥聴風吹雨、鉄馬氷河入夢來・・・・・十万軍声” 賈 誼 賈生才調世無倫。 賈生の才調 世に倫なし 哭泣情懐吊屈文。 哭泣 情懐 屈文を吊す 梁王堕馬尋常事。 梁王 堕馬は尋常の事 何用哀傷付一生。 何ぞ哀傷を用て一生に付す 賈生才調世無倫⇒本句は李商隠≪賈生≫。才調⇒才能。才気。 賈誼⇒（公元前200〜公元前168）西漢洛陽の人。政論家、文学家。 吊⇒弔う 倣陸放翁 （1958/12/21) 人類今嫻上太空。 人類 今嫻 太空に上る 但悲不見五州同。 但だ五州と同じを見ずを悲しむ 愚公尽掃叨蚊日。 愚公 尽に掃う叨蚊の日 公祭毋忘告馬翁。 公祭 忘るる毋れ馬翁に告るを 嫻⇒熟練。嫻于の意。 五州⇒アフリカ、アジア、アメリカ、ヨーロッパ、大洋州。全世界を指す。 叨蚊⇒貪婪する吸血の蚊虫。帝国主義と各国反動派を比喩する。 馬翁⇒マルクス 為女民兵題照 （1961/2) 颯爽英姿五尺槍。 颯爽たる英姿 五尺の槍 曙光初照演兵場。 曙光 初て照す演兵場 中華児女多奇志。 中華 児女 奇志多し 不愛紅装愛武装。 紅装を愛せず 武装を愛す 五尺槍⇒30式歩槍 照⇒写真 記念魯迅先生八十壽辰 （其の一） 博大胆識鉄石堅。 博大の胆識 鉄石堅 刀光剣影任翔旋。 刀光 剣影 翔旋に任す 龍華喋血不眠夜。 龍華 喋血 不眠の夜 猶制小詩賦管弦。 猶ほ小詩を制して管弦を賦す 龍華喋血不眠夜⇒1931/2/7夜、国民党上海龍華秘密殺害”左聯”を包括。革命青年23名 記念魯迅先生八十壽辰 （其の二） 鑑湖越臺名士郷。 鑑湖 越臺 名士の郷 憂恤為国痛断腸。 憂恤 国の為 断腸を痛ましむ 剣南歌接秋風吟。 剣南 歌は接す秋風の吟 一例氤氛入詩嚢。 一例 氤氛 詩嚢に入る 鑑湖越臺⇒鑑湖は魯迅の故郷に近く。越臺は越王臺を指す。 剣南歌接秋風吟⇒剣南歌接は陸遊の≪剣南詩稿≫ 秋風吟⇒秋瑾の≪秋風吟≫秋風秋雨愁殺人の詞。 陸遊、秋瑾と魯迅。都て詩味に富み愛国の熱情を表す。詩はこれらを比喩したもの。 為李進同志題所撮盧山仙人洞照 （1961/9/9） 暮色蒼茫看勁松。 暮色 蒼茫 勁松を看る 乱雲飛渡仍従容。 乱雲 飛び渡り仍ほ従容 天生一個仙人洞。 天生 一個 仙人の洞 無限風光在険峰。 無限の風光 険峰に在り 李進同志⇒江青。 屈 原 (1961年秋） 屈子当年賦楚騒。 屈子 当年 楚騒を賦す 手中握有殺人刀。 手中 握って殺人の刀あり 艾蕭太盛椒蘭少。 艾蕭 太はだ盛んに椒蘭は少なし 一躍冲向萬里涛。 一躍 冲向 萬里の涛 読≪封建論≫呈郭老 （七言律詩） （1973年8月) 勧君少罵秦始皇。 君に勧む罵しること少し 秦始皇 焚坑事件要商量。 焚坑事件は商量を要す 祖龍魂死業猶在。 祖龍の魂は死して業は猶ほ在り 孔学名高実秕糠。 孔学の名は高く実に秕糠 百代多行秦政治。 百代の多行 秦の政治 十批不是好文章。 十批 是れならず好文章 熟読唐人封建論。 熟読す唐人の封建論 莫従子厚返文王。 子厚より文王に返すこと莫れ 祖龍⇒秦始皇。 商量⇒考え。 秕糠⇒糟糠 子厚⇒柳宗元。古文運動倡導者。革新派成員。 文王⇒商末周族首領。仁政を行い著称。 参考資料：毛沢東詩詞・注釈賞析 珠海出版社。 世界百科事典：平凡社 Copyright (C) 1999-2004 石九鼎の漢詩舘 thhp://www.ccv.ne.jp/home/tohou/kise20.htm このページのリンクは自由です。無断コピーは禁止します |