梅 東

 山田梅東名敬直字其正別号翠雪又号無用庵主人平安人寛政九年丁己生


     秋山放鶴図
忽教仙騎脱籠熨。      忽まち仙騎をして 籠熨を脱せしむ
儘向秋山自在翻。      儘ま秋山に向かい 自在に翻がえる
従此白雲紅葉裡。      此れ従り 白雲 紅葉の裡
終応無夢到乘軒。      終に応に夢なく 乘軒に到るなるべし

    乗月酔帰
政是東山月出時。      政に是れ東山 月出る時
酔帰迷路歩遅遅。      酔帰 路に迷うて 歩して遅遅たり
却疑身被妖狐魅。      却って疑う 身は妖狐に魅せらるるるかと
樹影婆娑遊女姿。      樹影 婆娑たり遊女の姿

    寒 景
摩桫蒿目望郊畿。     蒿目を摩桫たり 郊畿を望む
寒景荒涼草木腓。     寒景 荒涼として 草木腓る
可惜流年留不得。     惜しむべし流年 留まること得ず
晨光次第赴熹微。     晨光 次第 熹微に赴く

     信 筆  七首之一
自慙精力老加窮。     自から慙る 精力 老い加ること窮まり
耄学難追陸放翁。     耄学 追い難し 陸放翁
近日作詩多絶句。     近日 詩を作すは 多く絶句
強顔剛道傲雲菘。     強顔 剛道 雲菘に傲る

     信 筆  七首之二
家住佳山秀水中。     家は住す佳山 秀水の中
釣鮮酔碧楽何窮。     鮮を釣り碧に酔う 楽しみ何ぞ窮わまらん
聞誉無喜毀無怒。     誉を聞き 喜び無く 毀し怒ること無し
半嶺閑雲半浦風。     半嶺閑雲 半浦の風