伊坂柳処

伊坂柳処。名を淑人、阿波の人

       題 画
草色吹煙暖。   草色 煙を吹いて暖かく
疎籬晒短簑。   疎籬 短簑を晒す
牧童眠未醒。   牧童 眠り未だ醒めず
牛背落花多。   牛背 落花 多し

       画寒鴉
缺月穿窓隙。   缺月 窓隙を穿がつ
繁霜圧枕辺。   繁霜 枕辺を圧す
唖唖先暁起。   唖唖 先ず暁に起きる
驚破酔人眠。   驚破す 酔人の眠り

      画杜鵑
切切不停鳴。   切切たり 鳴いて停まらず
可禁孤客情。   禁ずるべき 孤客の情
貴人金殿上。   貴人 金殿に上る
糸竹徹霄声。   糸竹 徹霄声

      画 龍
曽是池中物。   曽て是れ 池中の物
一朝得其時。   一朝 其の時を得る
飛騰衝天起。   飛騰 天を衝いて起る
震動轟地来。   震動 地を轟かして来る
草樹仆広野。   草樹 広野に仆れ
波濤溢大陂。   波濤 大陂に溢れ
若非遇雲雨。   若し雲雨に遇はざれば
龍徳有


       画 虎
怒吼山欲崩。   怒吼 山 崩れんと欲す