加藤桜老 加藤桜老。名は凞、字は伯敬。初名は有隣。常陸笠間の藩士。和漢に通ず。維新の際、尽くすところ有り。福原越後の会津藩主松平容保と蛤御門に戦う。明治二十七年没。年七十七。 　　　　　　災余迎歳戯賦 焚蕩総如秦火墟。　　　焚蕩　総て秦火の墟の如く 灰冷纔存半壁書。　　　灰冷に　纔づかに存す　半壁の書 瓶梅一朶花還綻。　　　瓶梅一朶　花還た綻ぶ 依旧新年興有余。　　　旧に依って新年　興　余り有り 　　　　　　　又 身甘寒素談仁義。　　　身は寒素に甘じ　仁義を談ず 俗士笑子尤俗哉。　　　俗士　子を笑うは　尤も俗哉 人間総似塞翁馬。　　　人間　総て塞翁が馬に似て 清福常従天外来。　　　清福　常に　天外より来るに従う 　　　　　　　又 誰知此老老猶頑。　　　誰が知る　此の老い　老いて猶を頑なるを 北馬南船海又山。　　　北馬南船　海又た山 回顧浮沈真一笑。　　　浮沈を回顧　真に一笑 徒過六十六年間。　　　徒ずらに過たる　六十六年間 　　　　　　災後除夕守歳 梅花為壁月為隣。　　　梅花　壁と為し　月　隣と為す 歳又崢嶸奈此身。　　　歳又た崢嶸　此の身を　いかんせん 家付祝融無一物。　　　家に祝融を付すは　一物も無し 詩書満腹未全貧。　　　詩書　満腹　未だ全ったき貧ならず 　　　　　　豊太閤征韓歌　（戯用十二支体） 駆逐群雄如鼠輩。　　　群雄を駆逐　鼠輩の如し 遊刃聊試解牛枝。　　　遊刃　聊か　牛枝を解するを試みる 一搏扶揺虎生翼。　　　一搏　扶揺　虎　翼を生じ 守株豈待巉兔至。　　　守株　豈に待たん　巉兔の至るを 絶海朦艟走群龍。　　　絶海　朦艟　群龍を走らす 勿道小蛇吞象志。　　　道う勿れ　小蛇　象を吞む志 萬馬蹂躙八道衢。　　　萬馬　蹂躙　八道の衢 貔貅如雲亦羊馳。　　　貔貅　雲の如く　亦た羊馳す 猿郎武威大明震。　　　猿郎が武威　大明震 豈啻鶏林帰版図。　　　豈に啻だ　鶏林　帰版の図 三韓従来日本狗。　　　三韓　従来　日本の狗 訓服又為収豬奴。　　　訓服　又た　収豬奴と為す 　　　　　　　09/03/27　　　石　九鼎