勝海州 海舟勝安方＜1823〜1899　幕末・維新期の政治家＞旗本小普請組の勝小吉の長男として江戸に生まれる。1860年、日米修好通商条約の批准書交換のためアメリカに使節が派遣されるとき、咸臨丸を指揮し、日本人初の太平洋横断航海に成功。帰国してから各職を歴任、1864年には軍艦奉行となり、神戸に海軍操練所を開いて幕臣や坂本竜馬を教育した。戊辰戦争で西郷隆盛と会見、江戸城の無血開城を決めた。。 　　　　　　　　　　　偶　成 天地育生無偏私。　　　　　　天地　生を育け　偏私　無し　　　　※偏私＝不公平 日月照物自至公。　　　　　　日月　物を照らし　自から公に至る 千山花香長春節。　　　　　　千山　花香　長春節 萬木葉染高秋風。　　　　　　萬木　葉染　高秋風 四時循環豈徒爾。　　　　　　四時　循環　豈に徒爾　　　　　　　※＝徒爾＝いたずらに 世人難解造化工｡　　　　　　世人　解り難し　造化の工 争小利兮失大利。　　　　　　小利を争い　大利を失う 誇微功兮誤全功。　　　　　　微功を誇り　全功を誤まる 鳴呼千載一時実此際。　　　鳴呼　千載　一時　実に此の際 典廃尤思全始終。　　　　　　典廃　尤思　始終に全きし 微力難奈報今日。　　　　　　微力　いかんとも難く　今日を報ず 半世空蒙主恩洪。　　　　　　半世　空蒙　主恩　洪たり 辱知師友骨半朽。　　　　　　辱知す師友　骨　半ば朽すを 接面交用意難通。　　　　　　面に接し交用　意　通じ難く 痴迷獨憐大道迂。　　　　　　痴迷　獨り憐む大道の迂 蹉趺常恐孤愚忠。　　　　　　蹉趺たり　常に恐るる　孤愚忠　　　※孤忠＝ただ一人頑張り忠義を尽くす。 酸辛知否世味美。　　　　　　酸辛　知るや否や　世味の美　　　　※酸辛＝辛酸 真味却在無味中。　　　　　　真味　却って無味　中に在り 　　　　　　　　　　　失　題 昔人去不帰。　　　　昔人　去って帰らず 空余首陽薇。　　　　空余　首陽の薇 萬嶽誰知己｡　　　　萬嶽　誰が知己なり 一簑換朝衣。　　　　一簑　朝衣に換える 孤舟大江晩。　　　　孤舟　大江の晩 萬天雪霏霏。　　　　萬天　雪　霏霏たり 　　　　　　　　　偶　成 群動日駸駸。　　　　群動　日に駸駸たり 聊足慰煩襟。　　　　聊さか煩襟を慰めに足りる 世上風雨悪。　　　　世上　風雨　悪し 鴉雀悲疎林。　　　　鴉雀　疎林を悲しむ 豈何張密羅。　　　　豈に何ぞ　密羅を張る 尚憶有好音。　　　　尚を憶う　好音　有るを 後事今難言。　　　　後事　今　言い難し 昂然表素心。　　　　昂然として　素心を表す 　　　　　　　　　失題 多年蹉?没埃塵。　　　　多年　蹉?たり埃塵に没す 揣摩心情思天真。　　　　心情を揣摩し　天真を思う 華屋雖羨是浮栄。　　　　華屋　羨しと雖ども　是れ浮栄 富如泡沫名如烟。　　　　富は泡沫の如く　名は烟の如し 笑看江上依然碧。　　　　笑うて看る　江上の依然として碧を 行蔵豈亦関千人。　　　　行蔵　豈に亦た　千人に関す 風捲敗葉夜寂寂。　　　　風は敗葉を捲いて　夜　寂寂 嘯響凛然一剣寒。　　　　嘯響　凛然　一剣　寒 　　　　　　　　　　　　　　　石　九鼎　　２００９／０２／２５