黄　石 黄石岡本名迪字吉甫別号湖山長近江人文化八年辛未生。 　　　　　夏秋之交雑詩　（一） 歴落星河影欲流。　　　　歴落たる星河　影　流れんと欲っす 草虫機杼報新秋。　　　　草虫　機杼　新秋を報じる 城中児女飄歌扇。　　　　城中の児女　歌扇を飄えす 隊隊分行唱女牛。　　　　隊隊　行を分ち　女牛を唱える 　　　　　夏秋之交雑詩　（二） 風弾香露濺欄干。　　　　風　香露を弾じ　欄干に濺ぐ 凉月照人余熱残。　　　　凉月　人を照らし　余熱　残す 半畝庭池波漾漾。　　　　半畝の庭池　波　漾漾 白蓮開作小湖看。　　　　白蓮　開いて小湖の看と作す 　　　　　　従下山田到杉野 纔出渓来又入山。　　　　纔ずかに渓を出て来り　又　山に入る 羊腸経路往如還。　　　　羊腸たる経路　往て還る如し 征衫無復熱塵触。　　　　征衫　復た熱塵の触る無く 終日不離空翠間。　　　　終日　空翠の間を離れず 　　　　　　　湊川 憶古行行首重回。　　　　古しえを憶い　行行　首　重て回す 一川流水帯余哀。　　　　一川の流水　余哀を帯る 凄風落日千行涙。　　　　凄風　落日　千行の涙 灑向楠公墓下来。　　　　灑で楠公墓下に向かって来る 　　　　　　　一谷 寒潮打岸海雲昏。　　　　寒潮　岸を打ち　海雲　昏し 往事千年踰僅存。　　　　往事　千年　踰　僅かに存す 更有何人薦蘋藻。　　　　更に何人の蘋藻を薦める有り 路傍古墓是王孫。　　　　路傍の古墓　是れ王孫 　　　　　　　広島雑詩 自寓長安已五霜。　　　　長安に寓す自り已に五霜 無端来滞海山陽。　　　　端し無く来り滞す　海山の陽 如同賈島�繩｣思。　　　　賈島　�繩｣思と同じが如し 今日長安是故郷。　　　　今日　長安　是れ故郷 　　　　　　　糸崎有憶星巌翁 細雨春帆惹暗愁。　　　　細雨　春帆　暗愁をく 也将詩酒滞帰舟。　　　　也た詩酒を将って　帰舟に滞すべし 百年無復星翁句。　　　　百年　復た星翁の句なし 風景依然双鷺洲。　　　　風景　依然たり　双鷺洲 　　　　　　　舟中口吟 壮観半日倚船窓。　　　　壮観なり半日　船窓に倚る 蕩滌平生芥蔕胸。　　　　蕩滌す平生　芥蔕の胸 我是江東謝安石。　　　　我れは是れ　江東の謝安石 驚涛駭浪坐従容。　　　　驚涛　駭浪　坐して従容