南摩羽峰 南摩羽峰。名は綱紀、字は士張、会津の人。昌平黌及び古賀謹堂の門に学ぶ太政官、文部省に歴任。後、東京大学、東京高等師範学校の教授。明治42年没。年８７。 　　　　　宿身延山清兮寺 重峰分下界。　　重峰　下界を分つ 草木自含霊。　　草木　自ら霊を含む 入座雲皆白。　　座に入りて　雲　皆な白く 滴簾嵐悉青。　　簾に滴りて　嵐　悉く青し 渓深龍出窟。　　渓　深うして　龍　　窟を出で 壇静鶴聴経。　　壇静にして　鶴　経を聴く 連日與僧語。　　連日　僧と語る 悠然欲忘形。　　悠然　形を忘れんと欲す 　　　　　　甲州雑詩 青山四面別開天。　　　青山　四面　別に天を開く 土地膏腴帯大川。　　　土地　膏腴　大川を帯びる 看取峡中多産物。　　　看取す峡中　産物多きを 葡萄園外盡桑田。　　　葡萄園外　盡ごとく桑田 　　　　　　西京雑感 白露金風旧鳳城。　　　白露　金風　旧鳳城 桂香如水為誰清。　　　桂香　水の如く　誰が為に清し 龍車東幸秋蕭瑟。　　　龍車　東幸　秋蕭瑟 三十六宮空月明。　　　三十六宮　空しく月明 　　　　　　初　夏 昨雨洗春痕。　　昨雨　春痕を洗う 山容如出浴。　　山容　浴を出ずるが如し 杜鵑忽一声。　　杜鵑　忽ち一声 樹樹吹新緑。　　樹樹　新緑を吹く 　　　　　　　山田長政 将士齊著日本装。　　　将士　齊しく著く日本装 刀槍鋭利弓銃良。　　　刀槍　鋭利　弓銃良し 施旗所向盡破砕。　　　施旗　向う所　盡く破砕す 唾手起為六昆王。　　　手に唾し　起きて六昆王と為る 四隣虜酋皆攝服。　　　四隣の虜酋　皆な攝服 我武維揚三天竺。　　　我武　維れ揚る　三天竺 中道齊志何須嗟。　　　中道　志を齊す　何ぞ嗟するを須いん 後勁有人姓木谷。　　　後勁　人あり　姓木谷 君不見草茅倔起幾英雄。　　君見ずや　草茅　倔起　幾英雄 百戦徒争神州中。　　　　　　　百戦　徒に争う神州の中 甲興乙亡一家耳。　　　　　　　甲興り乙亡ぶ一家のみ 多君海外建偉功。　　　　　　　多とす君が海外　偉功を建てるを 　　　　09/04/02　　　　石　九鼎