翠　雨 翠雨山田名信字義卿平安人文化十一年甲戌生 　　　　　　　　寒江夜泊図 水面茫茫夜色酣。　　　　水面　茫茫よして　夜色　酣たり 江檣山樹鎖霜嵐。　　　　江檣　山樹　霜嵐を鎖す 一杵鐘声落篷背。　　　　一杵の鐘声　篷背に落つ 始知咫尺有清藍。　　　　始めて知る　咫尺　清藍あるを 　　　　　　　　送岷易師帰五島 君去紫山玄海涯。　　　　君は去る　紫山　玄海の涯 長風萬里跨鯨鯢。　　　　長風　萬里　鯨鯢を跨ぐ 人情咫尺尚惜別。　　　　人情　咫尺　尚ほ別を惜しむ 何况西肥西復西。　　　　何ぞ况んや西肥　西復た西 　　　　　　　　残菊 吹老秋風陶令籬。　　　　吹き老いる　秋風　陶令の籬 爛黄已見菊花摧。　　　　爛黄　已に見る　菊花の摧 随扶随倒全無力。　　　　随扶　随倒　全て力なく 曽学先生酔態来。　　　　曽て先生酔態を学び来る 　　　　　　　鴨涯寓居襍詩 晩来置酒碧欄凭。　　　　晩来　置酒　碧欄に凭る 山影如眠煙翠凝。　　　　山影　眠るが如く　煙翠　凝る 櫛比高楼鳬水岸。　　　　櫛は高楼に比す　鳬水の岸 一星星上柳梢灯。　　　　一星　星は上る　柳梢の灯 　　　　　　　　　又 依山多是梵王城。　　　　山に依り　多く是れ　梵王の城 法鼓声乾弄晩晴。　　　　法鼓　声乾　晩晴を弄す 梢見模糊川西暗。　　　　梢見　模糊たり　川西暗く 天台独立半空明。　　　　天台　独立　半ば空明