天 江

江馬天江名聖欽字正人一字永弼別号星楂鴎客平安人文政八年乙酉生


      題画自述  (露根蘭)
満叢芳露是天恩。   満叢芳露是れ天恩
何処山林不托根。   何処の山林 根を托さず
萬古綿綿一王土。   萬古綿綿一王土
豈同呼宋又呼元。   豈に同じくせんや宋と呼び又た元と呼ぶを

      歌中山
鐘磬寂寞不見僧。   鐘磬寂寞として僧を見ず
寺門鎖在白雲層。   寺門鎖して白雲の層に在り
空山霜後無人掃。   空山霜後 人の掃く無く
紅葉秋埋古帝陵。   紅葉秋埋む古帝陵

      東山寓居雑吟
一夜神澄夢不成。   一夜神澄て夢成らず
颱颱謖謖枕頭鳴。   颱颱謖謖枕頭に鳴く
幾年住在江塵裏。   幾年住して江塵の裏に在り
欠此松声與竹声。   欠く此の松声と竹声と

        
自甘迂計百年同。   自甘ず迂計百年の同
英龍看他翻手空。   英龍 看る他の 手を翻し空しきを
孤坐蕭然真有味。   孤坐蕭然真に味あり
半簾夜雨一灯中。   半簾夜雨一灯の中

       偶題
是非相半未帰公。   是非相半して未だ公に帰らず
月旦評成多異同。   月旦評成て異同多し
笑殺書生寒徹骨。   笑殺す書生 寒 骨を徹すを
梅花香底罵英雄。   梅花香底 英雄を罵る