柳原前光　（やなぎはらさきみつ） 青青柳原前光。号を青青と称す。藤原鎌足の末裔、嘉永三年三月東京生、資性剛毅にして事を処すること宜に適し堂上華族中最も其の名を知られる。夙に天下有意の士に誓って王事に勤労し明治元年戌辰の役、東海道先峰総督の任を帯び進んで江戸城を請取り、維新革政の後、清国に使して条約を終結。 露国公使、清国公使、元老院議長幹事を歴任する。明治十年西南の役には鹿児島に使いし島津侯父子を慰問し討賊の勅旨を発布し賊首の官位を拖くことを伝達。明治二十四年大病に罹り、二十七年九月三日を以って逝去。年四十四。子義光後を嗣ぐ　　（華族大系） 　　　　　閑　適 閑来自適小乾坤。　　　閑来　自適　小乾坤 春夏秋冬絶世喧。　　　春夏秋冬　世喧を絶つ 剛日看経柔日史。　　　剛日　経を看る　柔日の史 一軒風月也君恩。　　　一軒　風月　也た君恩 　　　　　楠　墓 楠子墓辺秋気清。　　　楠子　墓辺　秋気　清し 彷徨弔古仰英名。　　　彷徨　古を弔い　英名を仰ぐ 老松留得雄風在。　　　老松　雄風を留め得て在り 時聴千軍萬馬声。　　　時に聴く　千軍萬馬の声 　　　　　漫　成 慷慨悲歎寒月高。　　　慷慨　悲歎　寒月　高し 浮雲富貴付児曹。　　　浮雲　富貴　児曹に付す 功勲未了平生志。　　　功勲　未だ了せず　平生の志 辜負腰間三尺刀。　　　辜負す　腰間　三尺の刀 　　　　　遥望飛蠻台有懐鄭延平 鎮西山脈形容雄。　　　鎮西山脈　形容　雄なり 玄海波濤連半空。　　　玄海波濤　半空に連らなる 平戸地辺雲漠漠。　　　平戸地辺　雲　漠漠 遺蹤遥弔鄭成功。　　　遺蹤　遥に弔う　鄭成功 　　　　　　上海客中作 風波申江吹上海。　　　風波　申江　上海に吹く 楼楼歌管邀中秋。　　　楼楼　歌管　中秋を邀える 弦声如雁天如水。　　　弦声　雁の如し　天　水の如し 皎月高懸呉越州。　　　皎月　高く懸る　呉越の州 　　　　　　己己小春遊東台即事 法閣荘厳金碧囲。　　　法閣　荘厳たり　金碧囲む 一朝其奈衆謨違。　　　一朝　其の衆謨違をいかんせん 数千身血濯何処。　　　数千の身血　何処に濯ぐ 今日化為紅葉飛。　　　今日　化し紅葉と為して飛ぶ 　　　　09/03/26 　　　　石　九鼎