歴代中国女子詩選　　巻十 　　　　　　　　　　　　　　　　　七言絶句 (3) 　絶微之　　　　崔　鶯鶯（唐） 自従鎖痩減容光　　　　　自から鎖痩より容光を減ず 萬轉千廻懶下牀　　　　　萬轉千廻　牀に下るに懶うし 不為傍人羞不起　　　　　人と傍ならず　羞じて起きず 為郎憔悴却羞郎　　　　　郎が為　憔悴却って郎に羞じる 　 　楊柳枝詞　　　周　徳華（唐） 清渓一曲柳千條　　　　　清渓一曲　柳千條 二十年前旧枝橋　　　　　二十年前　旧枝橋 曾與情人橋上別　　　　　曾つて情人と橋上に別れ 更無消息到今日　　　　　更らに消息なく今日に到る 　得授仙詩　　　楊　監真（唐） 飛鳥莫到人莫攀　　　　　飛鳥　到る莫れ人の攀る莫れ　 一隠十年不下山　　　　　一隠十年　山を下らず 衰中短書誰為達　　　　　衰いて短書に中り誰が達する為なり 華山道士売薬還　　　　　華山の道士　薬を売りて還える 　寄夫　　　　 韋　[王　黄]周混妻 早知離別切人心　　　　　早に知る離別　人心に切なるを 悔作従来恩愛深　　　　　悔は従来に作り恩愛深し 黄泉冥漠雖長逝　　　　　黄泉　冥く長逝と雖も漠し 白日屏幃還重尋　　　　　白日　屏幃　還た重ねて尋ぬ 　送武補闕　　　襄陽妓（唐） 弄珠灘上欲消魂　　　　　珠を弄す灘上　魂を消ぜんと欲す　 獨把離懐寄酒尊　　　　　獨り離懐を把って酒尊に寄せる 無限煙花不留意　　　　　限り無きの煙花　意を留めず 忍教芳草怨王孫　　　　　忍んで芳草をして王孫を怨ましめる 　書紅箋　　　　平康妓（唐） 銀�ｽ斜背解鳴[王　當]　　　銀�ｽ　背を斜めに鳴[王　當]を解す 小語偸声喚玉郎　　　　　　小語　声を偸んで玉郎を喚ぶ 従此不知蘭麝貴　　　　　　此れより知らず蘭麝の貴きを 夜来新惹桂枝香　　　　　　夜来　新に惹く桂枝の香 　突蕨三台　　　盛　小叢（唐） 雁門山上雁初飛　　　　　　雁門山上　雁　初めて飛ぶ 馬邑闌中馬正肥　　　　　　馬邑闌中　馬　正に肥える 日[日　干]山西逢駅使　　　日[日　干]山西　駅使に逢う 慇懃南北送征衣　　　　　　慇懃に南北へ征衣を送る 　贈戯　　　　　趙　虚舟（唐） 砌下梧桐葉正斉　　　　　　砌下の梧桐　葉正に斉し 花繁雨後圧枝低　　　　　　花繁り雨後　枝を圧して低く 報道不須[亜　鳥]鳥乱　　　報じて道う須からく[亜　鳥]鳥の乱をもちいず 他家自有鳳皇棲　　　　　　他家自ら有り鳳皇の棲　 　贈友人　　　　常　浩（唐） 聞道東山逸興多　　　　　　聞道く東山　逸興多しと 為憐名月映滄波　　　　　　為に名月の滄波に映ずるを憐れむ 不辞紅粉随君去　　　　　　紅粉　君に随うて去ることを辞せず 其奈蒼生有望何　　　　　　其の蒼生の望み有るを奈何せん 　送人　　　　　除　月映（唐） 惆悵人間万事違　　　　　　惆悵す人間　万事の違うを 両人同去一人帰　　　　　　両人同に去り一人は帰る 生憎平望亭前水　　　　　　生憎　平望亭前の水 忍照鴛鴦相背飛　　　　　　忍んで鴛鴦を照らし相い背いて飛ぶ 　坐吟　　　　　紅　[糸　肖]　（唐） 深谷鶯啼別院香　　　　　　深谷鶯啼いて別院香ばし　 偸来花下翠珠[王　當]　　　偸み来う花下　翠珠の[王　當] 碧雲飄断音書絶　　　　　　碧雲　飄断　音書絶え 空倚玉簫愁鳳皇　　　　　　空しく玉簫に倚り鳳皇を愁う 　錦城春望　　　卓　英英（唐） 和風装点錦城春　　　　　和風　点を装う錦城の春 細雨如絲圧玉塵　　　　　細雨　絲の如く　玉塵を圧す 漫把詩情訪奇景　　　　　漫りに詩情を把って奇景を訪う 艶花濃酒属間人　　　　　艶花　濃酒　間人に属す 　和錦城春望　　眉　娘（唐） 蚕市初開処処春　　　　　蚕市初めて開く処処の春 九衢明艶起香塵　　　　　九衢　明艶　香塵を起こす 世間総有浮華事　　　　　世間総べて浮華の事あり 争及仙山出世人　　　　　争うて仙山　出世の人に及ぶ 　檀口　　　　　趙　鸞鸞（唐） 銜杯微動桜桃顆　　　　　杯を銜え微かに動く桜桃の顆 咳唾軽飄茉莉香　　　　　唾を咳き軽く飄す茉莉香んばし 曾見白家樊素口　　　　　曾つて見る白家　樊素口 瓠犀顆顆出榴房　　　　　瓠犀　顆顆　榴を出る房 　秋　　　　　　薛　氏（唐） 蘆雪覆汀秋水白　　　　　蘆雪　汀を覆う秋水白く 柳風凋樹暁山蒼　　　　　柳風　樹を凋む暁山蒼 孤灯客夢驚空館　　　　　孤灯　客夢　空館に驚く 獨雁征書寄遠郷　　　　　獨雁　征書　遠郷を寄せる 　　　　　　　リンクは自由です。無断で複製・転載することを禁じます 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　石九鼎の漢詩館 　　　　　　　　　thhp://www.ccv.ne.jp/home/tohou/rek12.htm