中国歴代女子選
                   明朝女子絶句詩選 (二)

  秋風     端 淑卿(明)
月満簾蘢露満台     月は簾蘢に満ちて露は台に満つ
夢驚梧葉下香揩     夢に驚く梧葉の香揩に下るを
都将煩暑潜消尽     都て将に煩暑もって潜んで消尽つくすべきに
却怪声従樹里来     却って怪しむ声 樹里に来る。

  和衛尉生   馬 月嬌(明)
長虹帯映竹辺楼     長虹 帯びて映ず竹辺の楼 
楼外煙光望里収     楼外の煙光 望里に収まる
一水盈盈人不見     一水 盈盈 人 見ず
数声腸断雁横秋     数声 腸は断えたり 雁横の秋

  画蘭     薛 素素(明)     
空谷佳人絶世姿     空谷の佳人 絶世の姿
翠羅為帯玉為肌     翠羅 為に帯びて玉 肌と為す
獨憐錯雑蕭蕭草     獨り憐れむ錯りて蕭蕭の草に雑るを
一段幽香惟自奇     一段の幽香 惟だ自から奇なり

  寄陳八玉英時留姑蘇  鄭 今燕(明)
何処簫声獨上楼     何処ぞ簫声 獨り楼に上る
傷心桃葉水空流     傷心 桃葉 水 空しく流れる
一従南国香鎖後     一たび南国より香鎖ざす後
誰復佳人字莫愁     誰か復た佳人 字は莫愁

  登楼     許 景樊(朝鮮子女)
紅欄六曲圧銀河     紅欄の六曲 銀河を圧す
瑞霧霏霏湿翠羅     瑞霧 霏霏たり 翠羅を湿らす
明月不知滄海暮     明月は知らず滄海の暮
九疑山下白雲多     九疑山下 白雲多し

  自適     李 淑媛(明)
虚簷残溜雨繊繊     虚簷 残溜 雨 繊繊たり
枕簟軽寒暁漸添     枕簟 軽寒 暁に漸やく添える
花落後庭春睡美     花落 後庭 春睡美なり
[口 尼]喃燕子要開簾  [口 尼]喃の燕子 簾を開ことを要す

  鞦韆詞    成 氏(明)
蹴罷鞦韆整繍鞋     鞦韆を蹴り罷めて繍鞋を整う
下来無語立揺階     下り来り語なく揺階に立つ
蝉衫細湿軽軽汗     蝉衫 細やかに湿める軽軽の汗
忘却教人拾墜釵     忘却す人をして墜釵を拾はしむを

  楊柳詞    兪 汝舟妻(明) 
條妬繊腰葉妬眉     條は繊腰を妬く葉は眉を妬く
妬風愁雨尽低垂     風に妬き雨に愁い尽とく低く垂れる
黄金穂短人争挽     黄金の穂は短く人 争うて挽く
更被風吹折一枝     更に風吹により一枝を折れる

  怨詞題壁   会稽女子(明)
銀紅衫子半蒙塵     銀紅の衫子 半ば蒙塵
一盞孤灯伴此身     一盞の孤灯 此身を伴う
恰似梨花経雨後     恰も似たり梨花 雨後を経たるに
可憐零落不成春     憐むべし零落 春をなさず

  怨題     小 青(明)
冷雨幽窓不可聴     冷雨 幽窓 聴くべからざる
挑灯閑看牡丹亭     灯を挑げ閑に看る牡丹亭
人間亦有痴于我     人間 亦た痴は我よりも有り
豈獨傷心是小青     豈に獨り傷心 是れ小青なり

  落梅     項 蘭貞(明)
雅淡名花氷雪姿     雅淡 名花 氷雪の姿
断腸明月夜深時     断腸す明月 夜深の時
無端忽被狂風雨     端たなく忽ち狂風による雨
零落清香総不知     零落 清香 総て知らず

  落花     方 氏 (明)
緑窓人静落残紅     緑窓 人静に落残紅
飛尽郊園錦幾叢     郊園に飛び尽す錦 幾叢
黄鳥解人憐惜意     黄鳥 人の惜意を憐れむを解す
却将婉語罵東風     却って将に婉語もって東風を罵べきに



       リンクは自由です。無断で複製・転載することを禁じます
                    石九鼎の漢詩館
         thhp://www.ccv.ne.jp/home/tohou/rek19.htm