中国歴代女子詩選 　　　　　　　　　　　　　　　　七言律詩　（宋代） 　　新春　　　　　聆聆 十二欄干鎖画楼　　　　　　十二欄干　画楼を鎖す 春風吹損上簾鈎　　　　　　春風吹いて損う簾鈎を上るに 花心柳眼従教放　　　　　　花心柳眼　教えに従い放つ 蝶意蜂情一任休　　　　　　蝶意　蜂情　休むを一任す 好滞酒盃消旧恨　　　　　　好し酒盃を滞めて旧恨を消ぜん 禁持詩句遣新愁　　　　　　詩句を持すを禁じ新愁を遣わす 東君若也憐孤独　　　　　　東君　也た孤独を憐れむ若く 莫使韶光便似秋　　　　　　韶光をして便ち秋に似ら使むる莫れ 　　題駅亭　　　　杜　氏婦 江淮婦女別郷閭　　　　　　　江淮の婦女　郷閭に別れ 一似昭君遠嫁胡　　　　　　　一たび昭君　遠く胡に嫁すに似たり 黙々一身辞故国　　　　　　　黙々　一身　故国を辞す 区区千里逐狂夫　　　　　　　区区　千里　狂夫を逐う 慵拈簫管吹姜笛　　　　　　　慵拈の簫管　姜笛を吹く 懶繋羅裙舞鷓鴣　　　　　　　懶繋の羅裙　鷓鴣を舞す 多少眼前悲涙事　　　　　　　多少の眼前　悲涙の事 不如花柳日江都　　　　　　　花柳の日び江都にしかず 　　　寄林士登　　戴白齢 憶昔当初錯認君　　　　　　　憶う昔　当初　錯り君を認め 妾今軽蔑染紅塵　　　　　　　妾は今　軽蔑す紅塵に染まるを 雲情雨意渾女夢　　　　　　　雲情雨意　渾て夢の如し 海誓山盟総不真　　　　　　　海誓山盟　総て真ならず 柳毅不傳空口真　　　　　　　柳毅　傳えず空しく口真 王魁元是負心人　　　　　　　王魁　元是れ心に負く人 好花自有欄干主　　　　　　　花を好み自ら欄干の主あり 乱蝶狂蜂枉費神　　　　　　　乱蝶狂蜂　枉げて神を費す 　　対雪　　　　　　易祢妻 紛紛端雪圧山河　　　　　　紛紛たる端雪　山河を圧す 特出新奇和郢歌　　　　　　特に新奇を出し郢歌に和す 楽道幽人方閉戸　　　　　　楽道幽人　方に戸を閉めんとす 高歌漁夫正披蓑　　　　　　高歌漁夫　正に蓑を披く 自嗟老景光陰速　　　　　　自ら嗟す老景　光陰の速きを 惟使佳時感愴多　　　　　　惟だ佳時をして愴多きを感じせしめ 更念鰥居憔悴客　　　　　　更に居を鰥るを念う憔悴の客 映書無寝奈愁何　　　　　　書を映し寝る無く愁をいかんせん 　　閨情　　　　　　賈蓬莱 燕子南来雁北飛　　　　　　燕子　南来　雁は北飛 遠人何事竟忘帰　　　　　　遠人　何事ぞ竟に帰るを忘れ 一腔心病難形口　　　　　　一腔　心病　形口し難く 萬斛愁情尽属眉　　　　　　萬斛　愁情　尽ごとく属眉 試掠金釵臨暁鏡　　　　　　試に金釵を掠て暁鏡に臨み 潜垂玉筋漬春衣　　　　　　潜で玉筋を垂し春衣を漬す 隣姫莫問容憔悴　　　　　　隣姫　問う莫れ　なんぞ憔悴すと 只有西窓夜月知　　　　　　只だ西窓の　夜月の知る有り 　　題清風嶺　　　王氏（元） 君王無道妾当災　　　　　　君王無道　妾まさに災なるべし 棄女抛男逐馬来　　　　　　棄女抛男　逐に馬来 夫面不知何日見　　　　　　夫の面　知らず何日か見ん 妾身還向幾時回　　　　　　妾が身　還た幾時に向い回る 両行怨涙偸頻滴　　　　　　両行の怨涙　頻りに偸で滴す 一対愁眉鎖不開　　　　　　一対の愁眉　鎖して開らかず 遙望家郷何処是　　　　　　遙に家郷を望み　何処なる是れ 存亡両字実哀哉　　　　　　存亡の両字　実に哀しい哉 　　追和虞伯生城東看杏花韻　　　　　鄭久端 城東今日去看花　　　　　　城東　今日　去り花を看る 只用尭夫小小車　　　　　　只だ尭夫を用いる小小の車 夫襪青鞋供眺望　　　　　　夫は青鞋を襪し供に眺望 暖風紫閣少塵沙　　　　　　暖風　紫閣　塵沙少く 不須問酒来村店　　　　　　酒を問い村店に来を須いず 便好行吟到日斜　　　　　　便ち行吟　日の斜に到るに好し 記取及時成勝賞　　　　　　記取す成勝の賞するに及ぶ時 尊教容易過韶華　　　　　　尊教　容易　韶華を過ぐる 　　　題壁間　　　　　蘭氏 経渭難分濁與清　　　　　　経渭　分ち難し濁と清と 此身不幸厄紅中　　　　　　此身　不幸　紅中に厄す 孤児豈忍更他姓　　　　　　孤児　豈に更に他姓を忍ぶ 烈婦何曾事二人　　　　　　烈婦 　何ぞ曾つ事二人を事とする　 白刃自揮心似鉄　　　　　　白刃　自ら揮う　心　鉄に似たり 黄泉欲到骨如銀　　　　　　黄泉　到らんと欲す　骨　銀の如く 荒村日落猿啼処　　　　　　荒村　日は落ち　猿の啼く処 過客聞之亦惨神　　　　　　過客　之を聞き亦　神を惨ましむ　 　　題寿沙駅壁　　　万俟�寶_ 夫官湖右妾江東　　　　　　夫は湖右に官し妾は江東 三載孤幃日夕空　　　　　　三載　孤幃　日夕　空し 葵萼有心終向日　　　　　　葵萼　心あり　終いに日に向う 柳花無力苦随風　　　　　　柳花　力なく　苦に風に随う 両行血涙孤灯下　　　　　　両行　血涙　孤灯の下 万里家郷一枕中　　　　　　万里　家郷　一枕の中 雁到衡陽身即返　　　　　　雁は衡陽に到り身は即返 有書難倩子卿鴻　　　　　　書あり倩い難く子卿鴻 　　製衣寄外　　　　　劉氏（葉正甫妻） 情同牛女隔天河　　　　　　情は牛女と同じ　天河を隔つ 又喜秋来得一過　　　　　　又　秋来り一過を得るを喜ぶ 歳歳寄郎身上服　　　　　　歳歳　郎に寄せる身上の服 絲絲是妾手中梭　　　　　　絲絲　妾に是なる手中の梭 剪声自覚和膓断　　　　　　剪声　自ら覚える膓断に和するを 線脚那能抵涙多　　　　　　線脚　那ぞ能く涙多きに抵たる 長短只依先去様　　　　　　長短　只　先去様に依る 不知肥痩近如何　　　　　　知らず肥痩　近ごろ如何 2004/03/05 　　　　　　　　　Copyright(C)1999-2004　by Kansikan AllRightsReserved 　　　　　　　　　thhp://www.ccv.ne.jp/home/tohou/rek24.htm 　　　　　　　　　　　　　　　石九鼎の漢詩舘 　　　　　　　　　　　無断で複製・転載することを禁じます