五言絶句（１）

　　　　　　　　　　　　　歴代中国女子詩選　　巻五
　　　　　　　　　　　　　　　　　五言絶句　（一）

五言絶句
　粧殿答太宗　　　徐　恵（唐）
朝来臨鏡台　　　　　朝来　鏡台に臨む
粧罷暫徘徊　　　　　粧罷み暫らく徘徊し
千金始一笑　　　　　千金　始めて一笑す
一召[言　巨]能来　　一たび召され[言　巨]ぞ能く来たる

　遣使宣詔幸上苑　　　武　后（唐）
明朝遊上苑　　　　　明朝　上苑に遊ぶ
火速報春知　　　　　火は速や春を報じて知る
花須連夜發　　　　　花は須からく連夜に發くなるべし
莫待暁風吹　　　　　暁風の吹くを待つ莫れ

　題落葉詩　　　天宝宮人(唐）
旧寵悲秋扇　　　　　旧寵　秋扇を悲しむ
新思寄早春　　　　　新思　早春を寄せる
聊題一紅葉　　　　　聊ささか題す　一紅葉
将寄接流人　　　　　将に流人に接して寄せんとす

　紅葉詩　　　韓　氏（宣宗宮人）
流水何太急　　　　　流水　何ぞ太はだ急なる
深宮尽日閉　　　　　深宮　尽日閉ざす
慇懃紅葉好　　　　　慇懃　紅葉好し
好去到人間　　　　　好し去って人間に到らん　

　贈故人　　　蒋　[韋　昌]　　　　
昔別容如玉　　　　　昔別　容　玉の如き
今来鬢若絲　　　　　今来　鬢　絲の若く
涙痕応共見　　　　　涙痕　応さに共に見るべし
腸断阿誰知　　　　　腸断　阿誰知る

　鎖袍詩　　　馮　真妻（唐）
玉燭製袍衣　　　　　玉燭　袍衣を製す
金刀呵手裁　　　　　金刀手に呵して裁す
鎖情寄千里　　　　　情を鎖して千里に寄せる
鎖心終不開　　　　　鎖心　終に開かず

　誚喜鵲　　　張夫人（唐）
畴昔鴛鴦侶　　　　　畴昔　鴛鴦の侶　
朱門賀客多　　　　　朱門　賀客多おおし
如今無比事如今　比の事無なく
好去莫相過　　　　　好し去って相過ぐる莫れ

　　渓口雲　　張　文姫（唐）
一片渓口雲　　　　　一片　渓口の雲
纔向渓中吐　　　　　纔に渓中に向かって吐く
不復帰渓中　　　　　復た渓中に帰らず
還作渓頭雨　　　　　還た渓の雨と作る

　題奉慈寺　　楊　徳麟（唐）
日月金輪動　　　　　日月　金輪動く
栴檀碧樹秋　　　　　栴檀　碧樹の秋
塔分鴻雁翼　　　　　塔は分つ　鴻雁の翼
鐘掛鳳凰楼　　　　　鐘は鳳凰の楼に掛かる

　賦荊門　　薛　瓊（唐）
黄鳥翻紅樹　　　　　黄鳥　紅樹に翻がえる
青牛臥緑苔　　　　　青牛　緑苔に臥す
諸宮歌舞地　　　　　諸宮　歌舞の地
軽霧鎖楼台　　　　　軽霧　楼台を鎖す

　望月　　　張　瑛（唐）
天漢涼秋夜　　　　　天漢　涼秋の夜
沈沈一鏡明　　　　　沈沈　一鏡明なり
山空猿屡嘯　　　　　山空しく猿　屡々嘯く
林静鶴煩驚　　　　　林静かに鶴　煩々驚く

　述懐　　　廉　氏（唐）
青林有蝉響　　　　　青林　蝉響あり
赤日無鳥飛　　　　　赤日　鳥飛なし
徘徊東南望　　　　　徘徊　東南を望む
双涙共沾衣　　　　　双涙　共に衣を沾す

　題玉泉　　湘駅子女（唐）
紅葉酔秋色　　　　　紅葉　秋色に酔う
碧渓弾夜弦　　　　　碧渓　夜弦を弾ず
佳期再可不　　　　　佳期　再び可らず
風雨杳如年　　　　　風雨　杳として年の如とし

　春閨怨　　李　冶（唐）
百尺井欄上　　　　　百尺　井欄の上
数枝桃已紅　　　　　数枝　桃已に紅なり
念君遼海北　　　　　君を念う遼海の北
抛妾来家東　　　　　妾を抛ち家東に来る