聯珠詩格＞９＞
聯珠詩格
用莫嗔字格 （莫嗔字を用いる格）
宿禾村 周南峰
山 雨 初 収 凉 思 微 山雨 初めて収り 凉思 微なり
樹 林 陰 翳 逗 斜 暉 樹林 陰翳 斜暉を逗む
莫 嗔 野 店 無 肴 核 嗔ること莫れ 野店 肴核無きことを
薄 酒 堪 沽 豆 莢 肥 薄酒 沽に堪えて 豆莢肥たり
用莫怪字格 （莫怪字を用いる格）
漫書 司空図
渓 辺 随 地 有 桑 麻 渓辺 地に随て 桑麻あり
尽 日 山 程 数 十 家 尽日 山程 数十の家
莫 怪 行 人 頻 悵 望 怪むこと莫れ行人 頻に悵望することを
杜 鵑 不 是 故 郷 花 杜鵑は 是れ故郷の花にあらず
送蜀客 雍陶
劒 南 風 景 臘 前 春 劒南の風景 臘前の春
山 鳥 江 風 得 雨 新 山鳥 江風 雨を得て新なり
莫 怪 送 君 行 較 晩 怪しむこと莫れ君を送る行こと較晩ことを
自 縁 身 是 憶 帰 人 自ら身は是れ帰を憶う人に縁る
月中雨作 黄孝邁
半 池 明 月 晒 金 波 半池の明月 金波に晒す
一 片 秋 声 出 敗 荷 一片の秋声 敗荷より出で
莫 怪 閉 門 先 睡 去 怪しむこと莫れ 門を閉て先ず睡り去を
客 中 聴 雨 不 宜 多 客中 雨を聴いて 多に宜から不ず
用昨夜字格 （昨夜の字を用いる格）
自得 劉参玄
一 声 鐡 笛 喚 斜 陽 一声の鐡笛 斜陽をに喚ぶ
収 拾 煙 霞 咽 酒 觴 煙霞を収拾して 酒觴に咽ぶ
昨 夜 睡 眠 何 處 月 昨夜 睡眠 何の處の月ぞ
簑 衣 猶 帯 野 花 香 簑衣 猶ほ野花の香を帯びる
早梅 鄭月山
杖 黎 行 尽 幾 崔 嵬 杖黎 行尽す 幾く崔嵬ぞ
処 処 尋 梅 未 見 梅 処処 梅を尋ねて 未だ梅を見ず
昨 夜 雪 晴 山 有 月 昨夜 雪晴て 山に月あり
就 中 描 得 一 枝 来 中ん就く 一枝を描き得て来る
笋 何応龍
泥 中 莫 怪 出 頭 遅 泥中 怪むこと莫れ 頭を出すこと遅きを
歴 尽 冰 霜 祇 自 知 冰霜を歴尽して 祇だ自ら知る
昨 夜 震 雷 轟 渭 畝 昨夜 震雷 渭畝に轟き
請 君 来 看 化 龍 枝 請う君来りて 化龍の枝を看よ
宿西林 虞仲奇
東 風 和 冷 護 窓 紗 東風 冷に和して 窓紗を護す
睡 起 晴 蜂 報 晩 衙 睡起 晴蜂 晩衙を報ず
昨 夜 池 塘 春 雨 過 昨夜 池塘 春雨過ぎ
半 篝 新 緑 浸 鳴 蛙 半篝の新緑 鳴蛙を浸す
用従来字格 （従来の字を用いる格）
葺居（居を葺す） 李渉
負 郭 依 山 一 径 深 郭を負い山に依て 一径深し
萬 竿 如 束 翠 沈 沈 萬竿 束るが如く 翠沈沈
従 来 愛 物 多 成 癖 従来 物を愛して 多く癖と成す
辛 苦 移 家 為 竹 林 辛苦 家を移すは 竹林の為なり
七夕 石屏
天 上 銀 蟾 曲 似 鉤 天上の銀蟾 曲て鉤に似たり
萬 家 蕭 鼓 響 新 秋 萬家の蕭鼓 新秋に響く
従 来 世 事 多 児 戯 従来 世事 多くは児戯
不 獨 人 閨@乞 巧 楼 獨人閨@乞巧楼にみに不らん
西亭 李商隠
此 夜 西 亭 月 正 圓 此の夜 西亭 月正に圓なり
疎 簾 相 伴 宿 風 煙 疎簾 相伴て 風煙に宿す
梧 桐 莫 更 翻 凉 露 梧桐 更に凉露を翻すこと莫れ
孤 鶴 従 来 不 得 眠 孤鶴 従来 眠ことを得ず
用夜来字格 （夜来字を用いる格）
寄隣庄 （隣庄に寄せる） 韓渥
聞 説 経 旬 不 啓 関 説くならく 旬を経て 関を啓かずと
薬 窓 誰 伴 酔 開 顔 薬窓 誰と伴に 酔て顔を開く
夜 来 雪 壓 前 村 竹 夜来の雪 前村の竹を壓す
剩 看 渓 南 幾 尺 山 剩し看る 渓南 幾尺の山
聴鷓鴣（鷓鴣を聴く） 許渾
金 谷 歌 伝 第 一 流 金谷の歌 第一流に伝う
鷓 鴣 清 怨 碧 雲 愁 鷓鴣の清怨 碧雲愁う
夜 来 記 得 曽 聞 處 夜来 記得す 曽て聞し處
萬 里 月 明 湘 水 流 萬里 月明にして湘水流る
閨怨 高明叔
誤 種 千 愁 著 寸 腸 誤て千愁を種て 寸腸に著く
而 今 腸 断 奈 愁 長 而今 腸断 愁の長きを奈ん
夜 来 酒 醒 無 眠 處 夜来 酒醒て 眠處 無く
自 起 移 燈 看 海 棠 自ら起つて燈を移して 海棠を看る
梅花 蒙齋
惆 悵 南 枝 玉 雪 姿 惆悵す南枝 玉雪の姿
人 生 消 得 幾 歓 悲 人生 幾く歓悲をか消し得る
夜 来 酒 醒 欹 寒 枕 夜来 酒醒て 寒枕を欹つ
楼 上 胡 笳 抵 死 吹 楼上 胡笳 死に抵まで吹く
用年来字格 （年来の字を用いる格）
春懐 賈秋壑
燕 子 楼 前 柳 色 新 燕子 楼前 柳色新なり
画 眉 人 遠 鏡 生 塵 画眉 人遠して 鏡 塵を生ず
年 来 羞 結 空 牀 夢 年来 結ことを羞じる 空牀の夢
閑 撥 琵 琶 過 却 春 閑に琵琶を撥て 春を過却す
暮春 歐寓菴
恋 樹 残 紅 湿 不 飛 樹を恋う 残紅 湿て飛ばず
楊 花 雪 落 水 生 衣 楊花 雪の如く落て水 衣を生ず
年 来 百 念 成 灰 冷 年来 百念 灰冷を成す
無 語 送 春 春 自 帰 語無く春を送る 春自ら帰る
観梅 王秋江
一 見 冰 姿 便 解 顔 一たび冰姿を見て 便ち顔を解く
教 人 魂 夢 憶 孤 山 人をして魂夢に孤山を憶はしむ
年 来 心 定 無 閑 事 年来 心定て 閑事 無く
只 在 林 家 水 月 閨@ 只だ林家 水月の閧ﾉ在り
老慵 楽天
豈 是 交 親 向 我 疎 豈に是れ交親 我に向て疎なり
老 慵 自 愛 閉 門 居 老慵 自ら愛し 門を閉じて居す
近 来 漸 喜 知 聞 断 近来 漸く喜ぶ 知聞の断ことを
免 悩 ? 康 索 報 告 ?康を悩まして報告を索ことを免れる
断腸曲 周葵窓
一 股 金 花 両 臂 釵 一股の金花 両臂の釵
双 双 王 筋 界 香 腮 双双たる王筋 香腮さいを界す
近 来 自 覚 冰 肌 痩 近来 自ら覚う 冰肌の痩ことを
柳 緑 春 衫 放 窄 裁 柳緑 春衫 窄裁するに放す
用近来字又格 （近来の字を用いる又格）
西湖 李仲舟
湘 桃 深 處 五 陵 家 湘桃 深き處 五陵の家
堤 柳 陰 中 百 宝 車 堤柳 陰中 百宝の車
多 是 問 桃 尋 柳 客 多くは是れ 桃を問ひ 柳を尋する客
近 来 山 下 少 梅 花 近来 山下 梅花 少なし
感時（時を感じる） 陳月軒
平 湖 萬 頃 稲 秋 成 平湖 萬頃 稲秋成す
到 處 喧 然 頌 太 平 到る處 喧然として 太平を頌す
桑 海 誰 知 浮 世 改 桑海 誰か知る 浮世の改ることを
近 来 也 自 少 人 耕 近来 也た自ら 人耕 少し
田園雑興 范石湖
菜 菱 辛 苦 廃 犁 鋤 菜菱 辛苦 犁鋤を廃す
血 指 流 丹 鬼 質 枯 血指 丹を流し 鬼質枯れ
無 力 買 田 聊 種 水 力無く田を買うに 聊か水に種う
近 来 湖 面 亦 収 租 近来 湖面 亦た租を収む
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石九鼎の漢詩舘
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