潼関吏

士卒何草草。築城潼関道。   士卒何ぞ草草たる,城を築く潼関の道
大城鉄不如。小城満丈余。   大城は鉄も如かず,小城は満丈余
借問潼関吏。修関還備胡。   潼関の吏に借問す,関を修めて還た胡に備う
要我下馬行。為我指山隅。   我を要して馬を下りて行く,我が為に山隅を指す
連雲列戦格。飛鳥不能踰。   雲を連ねて戦格に列し,飛鳥踰えること能はず
胡来但自守。豈復憂西都。   胡来たれば但だ自ら守り,豈に復た西都を憂う
丈人視要処。窄狹容單車。   丈人要処を視よ,窄狹にして單車を容る
艱難奮長戟。萬古用一夫。   艱難長戟を奮う,萬古一夫を用いる
哀哉桃林戦。百萬化為魚。   哀い哉桃林の戦,百萬化して魚と為る
請嘱防関将。慎勿学哥舒。   請う防関の将に嘱し,慎て哥舒を学ぶこと勿れ


訳文
此処の潼関の道では,なぜあのように兵卒達が忙しく城を築いているのだろうか,大きな城は堅固で鉄さえも及ばぬ程であり,小さな城は満丈余りの高い所に築いている。何故この様にするのかと潼関の吏に尋ねるてみると,彼等の言うには,「此処の関所を修理して還た胡の賊軍が攻めてくるのを備える為だ」と言う。

そう言って私を馬から下りて歩かせて行く,自分の為に山隅を指さすので,その方を見ると,雲にまで連ねるかのように障害物の柵が並び戦格に列し,鳥さえ飛来することも出来ないくらい厳重さである。

役人が言うには,「この様にしておけば,賊が攻めて来た時は,こちらは但だ自ら守ればよいので,二度と復た長安を気ずかう事もないのです,要害の箇所を見てください,道幅が狹まくて一つの戦車も容ることが出来ません。一国家が艱難のときに味方が長い戟を奮うならば,此処を守るには永久に一夫の兵士を用いるだけだ大丈夫です。」と哀いことであった。

前年の桃林の戦のときは,官軍は大敗して百萬の兵士が溺死して化して魚と為ったではないか。私はこの防関の大将にお頼みしたい,どうか慎で前年の哥舒翰の真似はしないで下さい,と。



          Copyright(C)1999-2004 by Kansikan AllRightsReserved
             http://www.ccv.ne.jp/home/tohou/ sanri2.htm
                  石九鼎の漢詩舘