石田東陵

先哲者の漢詩＞３＞石田東陵

石田東陵
名は羊一郎　「１８６５－１９３４」仙台の出身。国分青厓、桂湖村と交友。　　　副島滄海に私淑していた。人と為り温厚篤実・古君子の風あり、詩は漢魏を標榜し時流を追はず、巍然たる古調に富む。東陵詩四巻一冊。

　「参考文献」　漢詩大講座。明治漢詩文集「筑摩書房」。日本漢詩

　　　　　　　　　答　人
蕭然樹竹掩門扉。　　　蕭然　樹竹　門扉を掩う
笑看人閒紛是非。　　　笑って看る　人間是非　紛たるを
山客眠醒啓窓望。　　　山客　眠り醒て　窓を啓いて望めば
千峰日出白雲飛。　　　千峰　日出でて　白雲飛ぶ

　　　　　　　漫成　三首之一
可治者吾心。　　　　　　治む可き者は吾が心
外飾復何用。　　　　　　外飾　復何ぞ用いん
被身以文（令＋羽）。　　　身に被らすに文れいを以ってすとも
梟不可為鳳。　　　　　　　梟は鳳と為す可からず

　　　　　　　三首之二
淵源無所養。　　　　淵源　養う所　無くんば
涸渇精與神。　　　　精と神とを涸渇せん
何必餓道路。　　　　何ぞ必ずしも　道路に餓えて
然後曰窮民。　　　　然る後　窮民と曰く

　　　　　　　　　柬　友
二月東風草欲蘇。　　　　二月　東風　草蘇せんと欲す
君家啼鳥已聞無。　　　　君が家　啼鳥　已に聞くや無や
小園寒気梅辺苦。　　　　小園の寒気　梅辺に苦
枝上来鳴只雀烏。　　　　枝上　来たり鳴くは　只だ雀烏

　　　　　　　望　嶽
萬古神霊宅。　　　　萬古　神霊の宅
巍然鎮海東。　　　　巍然として海東を鎮む　
浮嵐昏旦変。　　　　浮嵐　昏旦に変じ
積雪夏冬同。　　　　積雪　夏も冬も同じ
千里遙相望。　　　　千里　遙に相望めば
孤青尚未終。　　　　孤青　尚未だ終きず
久懐凌絶頂。　　　　久しく懐う　絶頂を凌ぎ
浩歌御天風。　　　　浩歌　天風を御さんと

　　　　　　　　竹　　二首之一
記宿山陰古寺前。　　　　宿すを記す山陰　古寺の前
満竿修竹碧秋煙。　　　　満竿の修竹　秋煙　碧なり
琅竿風戞夜來響。　　　　琅竿　風戞　夜来の響き
聴到天明終不眠。　　　　聴いて天明に到り　終に眼らず

　　　　　　　　　竹　　二首之二
浩蕩天風入竹林。　　　　浩蕩　天風　竹林に入る
科頭狼籍臥清陰。　　　　科頭　狼藉　清陰に臥す
野人無耳借糸竹。　　　　野人　耳の糸竹を借りる無し
但愛琅琅鳴玉音。　　　　但だ愛す　琅琅　鳴玉の音

　　　　　　白　蟻
白蟻蝕粱柱。　　　白蟻　粱柱を蝕む
外見不可知。　　　外見は　知るベ可らず
堂堂六尺士。　　　堂堂　六尺の士
腹中已爛糜。　　　腹中　已に爛糜す

　　　　　　　閑　居
顥気澄寥廓。　　　　顥気　寥廓　澄み
秋声入夜多。　　　　秋声　夜に入つて多し
敲扉如有客。　　　　扉を敲いて　客　有るが如し
風竹自婆娑。　　　　風竹　自ら婆娑

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