中国歴史紀行      (126)

         仏教聖地 五台山

五台山は四川省の峨嵋山・浙江省の普陀山・安徽省の九華山ととに中国の佛教の聖地とされている。山西省の五台県の東北に位置する。五台山は毎年9月に積雪、4月雪解け、盛夏は涼しく爽やかで、春・秋両季節の旅行でもセーター、パッチは必要。最も好い季節は毎年の夏季節。

仏教聖地・五臺山は日本では「円仁」。『入唐求法巡礼行記』約10年間に及ぶ在唐中の日記。円仁は、最後の遣唐僧として唐にわたり、日本の天台宗を大成させた。15歳で叡山に登り最澄の弟子となる。838年44歳で入唐、約10年間滞在する天台密教の行法である蘇悉地法を伝え日本の天台密教を大成させた。

又,62歳にして国禁を侵し宋の国に渡った学僧「成尋」。円仁と同じく仏教聖地・五臺山を目指し苦行した高僧がいる。7歳で大雲寺に入り”阿闍梨”(衆僧の模範となる高僧)になるが、宋代の中国に旅立つた成尋、母の深いきずなを振り切って中国に渡り三年後には必ず帰国すると母と約束したが生涯二度と日本に帰ることが出来なかった。成尋阿闍梨が渡航したのは西暦1073年のこと。

彼の著『参天台五臺山記』は当時の宋代、とりわけ開封を克明に記録し、貴重な資料として今に伝える。延久三年12月13日夜、成尋は宮中に於いて『甲の袈裟』を下賜される夢を見て、覚めて、後これは中国に於いて紫衣の拝領する瑞相だと思ったと言う。

11月1日、成尋たち一行はいよいよ、五台山へ向け出立つする
11月27日。成尋、五台山の東台を眺めて感激のあまり落涙する。
12月2日。五台山を離れ12月26日に開封に帰着。

成尋は帰国して大雲寺の佛法を再興するつもりでいたが、皇帝の引き止めによって断念し、代わりに具僧に佛書すべてを持たせて帰国させた。日本から連れて来た具僧を呼び出し、 『自分は勅命を無視出来ないので、帰国を断念するが汝は日本に帰るように』と論し、これまで収集してきた書籍と書状を託して帰したのだと言う。

成尋渡宋の時、成尋の母はすでに八十三歳。三年。四年と成尋の帰国を待ち望んだが、永遠の別れでもあった。成尋の母の日記(成尋阿闍梨母集)は現存する。

私達はホテル五峰賓館に到着。部屋が寒々とした光景が一層寒さを感じさせる。夜食に賓館で中国の白酒を買いテーブルの皆と飲酒。蒙古留学生の酒の強さには驚きだ!グイッと一気に飲みケロッとしている。未だ19歳だ。聞けば飲酒の年齢制限が無いと言う。

夜来、山風徐徐と言うより狂風土作。唸りを超える、思わず読経の声と勘違う風声に『成尋阿闍梨の五台山参台記』を想い出していた。

東西南北中の五つの峰が聳え、それぞれの山頂が平らかで樹木がなく、台形をなしているので、五台山と言う。五峰に囲まれた中を台内、外を台外と呼び、台内の中心を「台懐鎮」と言い、寺廟が多く、参拝、参觀者も多く、宿泊施設もある。我々は10月初旬に宿泊。暖房設備は整備と雖も夜は相当厳しい。

◇東台頂は一名を望海峰といい、海抜2795m。雲海の彼方に昇る朝日が観光のポイント。
◇西台頂は一名を挂月峰といい、海抜2773m。峰上に挂かる淡月は湾々として絵のように美しい。
◇南台頂は一名を錦繍峰といい、海抜2485m。野の花が多種多様で、春先から初夏にかけて最も好い
◇北台峰は一名を葉斗峰といい、海抜3058m。五台山の最高峰。高所の為に、雷は猛烈で風も激しい
◇中台峰は一名を翆岩峰といい、海抜2894m。台頂に灰白色の巨岩が堆積する遠望すると翡翠のよう

広済寺⇒西寺と俗称し、殿前に唐代の八角形の石幢が見もの、高さ4m台座に石獅子が刻されていた顕通寺⇒五台山の五大禅処の一つ、規模が大きく、最古の歴史を有す。門前の鐘楼は壮麗で、内部に巨大な銅鐘が下がり、その音は全山にこだますると言う。
塔院寺⇒顕通寺の南側にあり、五台山五大禅処の一つ。
青緑の山の中に聳える白塔は目を引く。五台山のランドマーク。白塔はラマ塔で高さ60メートル。聞くところよれば、米のとぎ汁でこねた石灰で築いたと言う。
殊像寺⇒五台山五大禅処の一つ。背面に三世佛「薬師・釈迦・弥陀」その両側に五百羅漢が眼をひく。
秋期から冬期ににかけての五台山は積雪と強風で防寒着でも震えあがる。その中でラマ教の信者が五体倒地で参拝する姿には感動した。

        

            五体倒地で巡礼するラマ教の信者と五台山遠望


参考資料
佛教聖地五台山。
五台山旅遊指南。五台山風景名勝区政府。
中国名勝辞典。上海文物出版。

2002/2/2



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