★ 卓文君 ★ (前179以後~前117頃)

   司馬相如の妻,臨卭(四川省)の富人卓王孫の女,司馬相如と共に辛苦を共にしたが相如が後に茂陵(陜西省興平県)
   の女を聘して妾にしようとしたので,「白頭吟」を作った,それで相如は思いとどまった。『西京雑記』に見える,

   司馬相如始與卓文君還成都.居貧愁懣,以所著鷫鸖裘,就市人陽昌貰酒,與文君為歓,既而文君抱頸而泣曰,我平生富足,
  今乃以裘貰酒,遂相與謀,於成都売酒,相如親著犢鼻褌滌器,以恥王孫,王孫菓以為病,乃厚給文君,文君遂為富人,
  文君姣好,眉色如望遠山,瞼際常若芙蓉,肌膚柔軟滑如脂.十七而寡,為人放誕風流,故悦長卿之才,而越礼,
  長卿素有消渇疾,及還成都,悦文君之色,遂以発痼疾,乃作美人賦,欲以自刺,而終不能改,卒以此疾至死,文君為誄,伝於世.

  司馬相如始め卓文君と成都に還る.貧に居りて愁懣,著けし所の鷫鸖裘を以って市人の陽昌に就きて酒を売る,
  文君と歓を為さんとす,既にして文君抱頸を抱えて泣きて曰く我れ平生富みて足れり,今乃ち以衣裘を以って酒を貰る
  ,と,遂に相與に謀り,成都に於いて酒を売る,相如親ら犢鼻褌を著けて器を滌い,以って王孫を恥かしむ,
  王孫菓して以って病と為し,乃ち厚く文君に給す,文君遂に富人と為る
    
  文君姣好にして,眉色は遠山を望むが如く,瞼際は常に芙蓉の若く,肌膚は柔軟滑にして如脂の如し七にして寡たり,
  人と為り放誕にして風流,故に長卿の才を悦びて,礼を越える,長卿素ねて渇疾の疾有り,成都に還るに及んで,
  文君の色を悦び,遂に以って痼疾を発す,乃ち美人賦を作り,以って自ら刺せんと欲すれども,終に改むる能わず,
  卒に此の疾を以って死に至る,文君誄を為り,世に伝わる。


    白頭吟  卓文君

    皚如山上雪   皚たること山上の雪の如く
    皎若雲間月   皎たること雲間の月の若し
    聞君有両意   聞く君が両意有りと
    故来相決絶   故に来たりて相い決絶す
    今日斗酒会   今日 斗酒の会
    明旦溝水頭   明旦 溝水の頭
    躞蹀御溝上   御溝の上に躞蹀すれば
    溝水東西流   溝水東西に流る
    凄凄復凄凄   凄凄として復た凄凄たり
    嫁娶不須啼   嫁娶に啼くを須いず
    願得一心人   願はくは一心の人を得て
    白頭不相離   白頭まで相離れざらん
    竹竿何嫋嫋   竹竿 何ぞ嫋嫋たる
    魚尾何簁簁   魚尾 何ぞ簁簁たる
    男児重意気   男児 意気を重んず
    何用銭刀為   何ぞ銭刀を用うるを為さん

   (詩語)
    ★明旦溝水頭: 溝水のほとりに赴くは,身を投げるるの意.種種の異論も有る.
    ★躞蹀: 行くさま
    ★凄凄: さめざめと泣き悲しむ
    ★嫋嫋: 長くてしなやか
    ★簁簁: 動くさま
    ★銭刀: 貨幣,金銭のこと
                 

  ◇語釈:私の身の潔白ことは山の上の雪の如くでございます。清明のことは雲間を照らす月のようでもございます。
  ところが、聞けば、あなたには二心があるととのこと。
  それでわざわざ参りまして縁を絶とうと思うのでございます。今日は一斗の酒を酌んで、お逢いしてますが、
  明日の朝はお別れして、お溝の畔をとぼとぼと、歩く身でございます。お溝の水は東と西に分かれて、私の身と同じ、
  思えば寂しく涙がしきりにこぼれます。

  女がお嫁に行くときは、悲しくなるものですが、決して泣くには及びません。真心の籠った持った人を得て、
  共に白髪の末までも添い遂げることです。釣り糸を垂れた、竹竿の、なんとナヨナヨしなやかなことですこと、
  その餌に尾を動かして来る、魚の浅ましさ。男というものは心意気が大切でございます。金銭なんか何の用になりましょうぞ。

  宅文君の作、には異論もある。


   2007/12/8   石 九鼎


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