曲 江 (二首其の1)
乾元元年(47)。近体詩。曲江の暮春に感じて作った詩。

朝回日日典春衣。      朝より回りて日日 春衣を典す
毎日江頭盡酔還。      毎日 江頭に 酔を盡して還る
酒債尋常行処有。      酒債 尋常 行処に有り
人生七十古来稀。      人生 七十 古来稀なり
穿花蛺蛟深深見。      花を穿の(蛺蛟)きょうちょう深深として見え
点水蜻蜒欸欸飛。      水に点ずるの蜻蜒(せいてい) 欸欸として飛ぶ
伝語風光共流転。      語を伝う 風光 共に流転して
暫時相実莫相違。      暫時 相実すること相違うこと莫れ

[見]一に舞うと作る有り。
[欸欸]一に緩緩と作有り。
[流転]宋本に[流伝]と作る有り。
『梁簡文帝・詩』花留蛟蝶粉、竹翳蜻蜒珠。(花留どまり蛟蝶 粉たり、竹翳げりて蜻蜒 珠たり)。

詩語解
[朝回]朝廷よりかえってきて。
[典]質屋に質として置く。
[酒債]酒代の借り。
[点水]水面に尻尾でチョッlチョツとたたく。
[蜻蜒]トンボ。
[欸欸]ゆるゆると。

詩意
朝廷からもどって来ると、毎日のように、春着を質に置いて、曲江の畔に来ては酔を尽くして還る。酒手の借りは珍しくもなく、到る処にあれが、どうせ昔から、七十まで長生きするものは、めったにないのだ。花の間をぬってゆく蝶は、奥深い所に見え、水面を、軽くたたくトンボはゆるゆると飛んでいる。
私はこの春景色に、ことづてしたい。我が身も春光も、共に移り流れて行く上は、暫くの程の鑑賞である、お互いに、そむかぬようにしようではないか。

                     
                    西安郊外の曲江池跡に建つ石碑



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