有 客
 
お客の来たのを喜ぶ。成都草堂での作。上元元年。近体詩。

幽棲地僻経過少。     幽棲 地僻にして経過少し
老病人扶再拝難。     老病 人に扶けられて再拝すること難し
豈有文章驚海内。     豈に文章の海内を驚かす有らんや
漫労車馬駐江干。     漫に労す車馬の江干に駐するを
竟日淹留佳客坐。     竟日 淹留 佳客坐す
百年?糲腐儒餐。     百年 ?糲 腐儒餐す
不嫌野外無供給。     野外の供給 無きを嫌わずんば
乗興還来看薬?。     興に乗じて還た来りて薬?を看よ

○有客、「一賓至、詳細本作賓至」(一に賓至、詳細本は賓至と作る)。
不嫌 「詳細云、一作莫嫌」 (詳細は云う、一作に嫌う莫れ)。
『何遜・詩』 [
幽棲多暇豫] 幽棲 暇豫多し

詩語解
幽棲(ゆうせい)] 閑かに世を隠れて暮らす。
経過] 人の立ち寄ること。
] 両方から体を抱きかかえられる。
再拝] 丁重にお辞儀をする。
文章] 文学。
海内] 天下。
漫労(ろうまん)] いたずらに患わす。客が虚名に惑わされ来たと謙遜して言う。
江干] 川の岸。川のほとり。
竟日](じんじつ) 一日中。
百年] 生涯。
?糲](それい) 荒く搗いた米。一斛の、「籾」(もみごろ)を、六斗搗くのが「」。
薬?] 「芍薬畑の囲い」 薬草畠の手すり。

詩意
自分が閑かに世を隠れて住んで居る土地に立ち寄ってくれる人は少ない。叉、年寄りで病身の私は人から助けられても、お客にお辞儀をするのは困難だ。お客は私の文章を慕うて来訪されたのかも知れないが、どうしても自分には海内を驚かすほどの文章があろうか。実にわざわざ、この江べりまで車馬を止めてくださったことは、無駄なご苦労と申すほかない。
お客さまは一日中、此処に居残り坐してくださる。腐儒たる私は今に始まらず、荒く搗いた米を食べている。野外なので格別お持て成しする物は有りませんが、それを、おいといにならぬならば、お気のむいた時またお出でになって、庭の薬草畑をご覧下さい。



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