西郊

城中を出て西郊より草堂に帰り来たことを述べる。上元元年冬の作詩とされる。上元元年。近体詩。

時出碧鶏坊。   時に碧鶏坊(へきけい)を出でて

西郊向草堂。   西郊より草堂に向う

市橋官柳細。   市橋 官柳 細に

江路野梅香。   江路 野梅 香し

傍架齋書帙。   架に傍いて 書帙を齋へ

看題検薬嚢。   題を看て 薬嚢(
やくのう)を検する

無人覚来往。   人の来往を覚える無し

疎懶意何長。   疎懶(
そらん) 意 何ぞ長き

○路、 一作岸。
○検、 一作減。
○覚、 一作競。叉作與。
碧鶏坊] 成都の西南にあった百二十坊の中の一坊の名。
[市橋] 成都西南、石牛門にあった。
[?康・與山巨源絶交書] 性復疎懶。

[詩語]
[官柳細]官で植えた柳の條(細い)。
[傍架]架は本棚。
[帙]書衣。
[題]表題。
[検]調べる。
[無人覚来往]人の来往を知らない、をいう。(仇兆鰲は「人(跡) 来往 不見」)と説く。

[訳文]
私は時として碧鶏坊から出て西郊を経て草堂へと向かう、途中の道の市橋では柳が細く垂れている。川沿いの路では野梅の花が匂うている。草堂に着けば書架に寄り添うて帙を整理したりする。叉、表題を看ながら薬袋を調べたりする。往きも帰りも誰も気づかない。此の様な生活は無精な気持ちがのんびりとして、叉、良い物である。


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