草 堂 即 事
浣花の草堂に於いて折に触れ読む詩。上元二年十一月の作。近体詩。 52

荒村建子月。     荒村 建子の月
獨樹老夫家。     獨樹 老夫の家
雪里江船渡。     雪里 江船渡り
風前竹径斜。     風前 竹径斜なり
寒魚依密藻。     寒魚 密藻に依り
宿雁聚圓沙。     宿雁 圓沙に聚る
蜀酒禁愁得。     蜀酒 愁に禁へ得る
無銭何處?。     銭無くして何の處にか?らん

詩語解
草堂] 浣花渓の草堂。
即事] 事につけてそのままを述べる。
[荒村] 草さ深き村。浣花村をいう。
[建子月] 粛宗の上元二年九月,詔して上元の号を元年と称し,十一月を以て歳の首とし,月は北斗の柄の建つ處の辰を以て名を【建子月の壬午朔日に天子朝賀を受ける事,元旦の儀】の如し。
[獨樹] 一本の木。
[老夫] 自分ををいう。
[密藻] 繁った水草。
[禁] 当の羲。
[?] かけで買う。

詩意
現在,草の深い村の建子の月。この老い耄れた私の家。見れば雪降るなかに川船ご通り,風吹く竹林が斜に通っている。寒さを避けるように繁げった水藻に寄りかかって,昨夜から留まっている雁の数羽。雁は円形の沙原に聚まっている。此の様な時期に蜀の酒を飲めば,愁いを払拭出来るが,銭が無いので,何処で,買う方法もない,そこで,掛けで買うとしよう。



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