春日江村  五首之(一) 此の詩は五首の内の四首目。
永泰元年正月三日,以前から幕府の職務から解放されることを希望していた杜甫は,遂に許可され草堂生活にもどる。煩わしい人間関係から解放された,杜甫は自由になった喜びを詠っている。近体詩。

扶病垂朱紱(糸+犮)。      病を扶けられて 朱紱(糸+犮)を垂れ
帰休歩紫苔。            帰休して 紫苔の歩す
郊扉存晩計。            郊扉 晩計 存す
幕府愧群材。            幕府 群材に愧づ
燕外晴糸巻。            燕外 晴糸巻き
鴎辺水葉開。            鴎辺 水葉開く
隣家送魚鼈。            隣家 魚鼈を送り
問我数能来。            我を問うて 数々能く来たる

詩語解
[扶病] 病身な身を人から扶けられる。
[朱(糸+犮)ふつ] 朱色の前垂れ。官服の緋衣。
[帰休] 暇をもらって草堂に帰り休む。
[郊扉] 郊外のとびら。草堂を指す。
[晩計] 晩年を過ごすはかりごと。
[晴糸] 遊糸をいう。作者の句に,「地晴絲冉冉,江白草繊繊。」晴れた日のカゲロウ。

詩意
自分が出仕すれば,人に病躯を支えられ,朱の袴を垂れているのだが,此処へ戻って休んで居れば庭の紫苔の上をブラブラ歩くのが楽しみである。幕府に居れば多くの人物に対して愧かしく思うし,此の郊外の草堂では晩年の計もここに存在しているというものだ。燕の飛び行く晴天に遊糸がもつれ,鴎の浮かぶ水上では浮き草が左右に押し開かれている。隣家の人は魚やスッポンを送って自分の安否を尋ね,度々やって来てくれる。   




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