去 蜀
長く住んでいた蜀の成都より立ち去ろうとして読んだ詩。永泰元年の夏,戎州渝州に向かう近体詩。

五載客蜀郡。    五載 蜀郡に客たり
一年居梓州。    一年 梓州に居る
如何関塞阻。    如何ぞ関塞に阻せられる
転作瀟湘遊。    転じて瀟湘の遊と作る
萬事已黄髪。    萬事 已に黄髪
残生随白鴎。    残生 白鴎に随はん
安危大臣在。    安危には大臣在り
不必涙長流。    必らずしも涙 長に流れしめず

○世,一作萬。
○不, 一作何。


詩語解
[蜀] 成都
[五載客蜀郡] 蜀郡とは蜀郡の治所,成都を指す。「五載」とは五年,此処では上元元年二年,寶応元年,広徳二年,永泰元年のこと,杜甫は乾元二年の冬期に成都に至るが其の年は一年と数えな
[一年居梓州] 広徳元年の一年を指す。
[阻] 阻隔されていること。
[瀟湘] 湖南省の洞庭湖の南の二つの川。亦はその地方。(此処では蜀を出て湘南の方に出て行こうと,する気持ちをいう。)

詩意
五年の間,蜀都の旅客となり,一年は梓州で暮らした。どうして何時までもこうして関塞に閉じ込めていらりょうか,いっそ方向を変えて,瀟湘の地方へ旅遊してみたい。こんなに頭髪が黄色になってしまっては,おしまいだ。これからの残生は白い鴎に随って,成り行きに任せて気儘に送ろう。国家安危の大事については,朝廷い大臣達もいることだ。私達が,いつも涙を流して,愁いていることもないだろう

・・・・・・・・・・ 再び漂泊へ・・・・・。

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