子 規
子規を聞いて作詩する。大暦元年春(杜甫55歳)雲安での作。近体詩。


峡裏雲安県。    峡裏の 雲安県
江楼翼瓦斉。    江楼 翼瓦斉し
両辺山水合。    両辺 山水合し
終日子規啼。    終日 子規啼く
渺渺春風見。    渺渺として春風に見え
蕭蕭夜色凄。    蕭蕭として夜色凄たり
客愁那聴此。    客愁 那でか此を聴かん
故作傍人低。    故に人に傍いて低るるを作す

○終日, 詳註云,一作盡日。
○凄,  詳註云,一作棲。
○故作句, 一作故傍旅人低。


詩語解
[子規] ほととぎす。子規と杜鵑と両種なりとの説があるが,同じものとして扱うことが多い。
[江楼] 自己の寓居。
[翼瓦齋] 翼瓦は屋簷の瓦が鳥の翼のように,はねあがぅていること。斉とは多くの瓦が列をなしてるさま。
[両辺] 人家の両側。
[合] 繁り鎖すさま。
[渺渺] 小さく見えるさま。
[見] 子規が見える。
[蕭蕭] 静かなさま。
[夜色凄] 昼もくらく,夜の色が冷たい様に覚える。
[那] なんぞ。
[此] 子規の声。
[故] 古意。
[傍人低] 低く人に傍いて飛ぶ。


詩意
此処は江楼の簷の瓦が鳥の翼のように列の連ねて様にみえる。両側には山水が鎖し,一日中,ほととぎすが啼いている。姿は春風に遠く小さく見える,啼くときは,木立に静かに夜の景色の様に覚えて冷たく感じられる。愁うる自分には聴くに絶えられない。何故に此の鳥は人につきそうて低く飛んで啼く



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