魯迅文集 摘録  (2)

◇時代を超越するというのは実に逃避である。もし自分に現実を直視する勇気が無いのに,革命の看板を掛けようとするなら,意識的に或いは無意識的に必ずその道に入り込む。
◆超時代其実就是逃避,尚自己没有正視現実的勇気,又要掛革命的招牌,便自覚地或不自覚地必然地要走入那一条路的。
   「魯迅 『文芸与革命』『三閑集』所收

◇蜂蜜の針は,ひと刺しで自分の命を失う。犬儒の針は,ひと刺しで自分の命を延ばす。
◆蜂蜜的刺,一用即喪失了它自己的生命。犬儒的刺,一用則苟延了他自己的生命。
   「魯迅 『小雑感』」 『而已集』所收

◇昔羽振りのよかった者は復古を願い,今羽振りのよい者は現状を願い,まだ羽振りのよくない者は革新を願う。
◆曾経闊気的要復古,正在闊気的要保持現状,未曾闊気的要革新。
    「魯迅 『小雑感』」 『而已集』所收

◇私は書き終えると,必ず二回は読み返し,自分でも解り難いと思うところは,何字か足したり,削ったりする,必ず読みやすいようにする。適当な口語が無ければ,むしろ古語を引用する,必ず誰か理解してくれるように希望する。
◆我做完之後,総要看両遍,自己覺得拗口語,就増刪幾個字,一定要它読得順口,没有相宜的白話,寧可引古語,希望総有人会(小+董)
    「魯迅 『我怎麼做起小説來』」 『南腔北調』所收

◇経験のない勇敢な若者は,往往にして他人のために疑問を解いてやったり,医者を見つけてやったりする。万一結果がよくなければ,逆に大抵恨まれてしまう。
◆不更事的勇敢的少年,往往敢於給人解決疑問,選定医者,万一結果不佳,大抵反成了怨府。
    「魯迅 『祝福』 」 『彷徨』所收

◇他人の歯や眼を傷つけておきながら,報復に反対し,寛容を主張する人間には,絶対に近づいてはならない。
◆損着別人的牙眼,却反対報復,主張寛容的人,万勿和他接近。
    「魯迅 『死』 」 『且介亭雑文末編・附集』 所集


慣於長夜過春時。   長夜に慣れて春時を過ごし
挈婦将雛鬢有糸。   婦を契え雛を将ちて鬢に糸あり
夢里依稀慈母涙。   夢里に依稀たり慈母の涙
城頭変幻大王旗。   城頭に変幻する大王の旗
◆長い夜に慣れて春を過ごし,妻子を伴って生きて来た,鬢には白いものが混じっている,夢の中で,ぼんやり母の涙が見える,現実では暴君の旗が城頭に変幻している。(1931年2月7日,国民党治安当局の手によって,魯迅と親しかった作家柔石ら18名の左翼活動家が銃殺された。
   「魯迅 「為了忘却的記念」 『南腔北調』所收

◇戦争へ行くなら軍医になるが好い,革命に参加するなら後方に回るのが好い,人を殺すなら首切り役人になるが好い。格好が好くて,又安全だ。
◆要上戦場,莫如做軍医。要革命,莫如走後方。要殺人,莫如做劍子手,即英雄,又穏当。
   「魯迅 『小雑感』 『而已集』所收

◇たとえ天才でも,生まれたときの産声は普通の子供と同じで,決して立派な詩ではない。
◆即使天才,在生下來的時候的第一声喚哭,也和平常的児童一様,決不会就是一首好詩。
   「魯迅 『未有天才之前』 『墳』所收

◇生きることの楽しさを思えば,もとより人生に未練は残る。しかし生きることの苦しさを思えば,死神もまた必ずしも憎むべき客でもない。
◆想到生的楽趣,生固然可以留恋。但想到生的苦趣,無常也不一定是悪客。
   「魯迅 『無常』」 『朝花夕拾』所收




        http://www.ccv.ne.jp/home/tohou/tohohu6-1.thm
         
Copyright (C) 2001-2003 石九鼎の漢詩館
      このページへのリンクは自由です。無断コピーは禁止します